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アジア開発銀行 ラオスのナムニアップ1ダム建設に144億円を融資、地域住民や生態系への影響解決は先送り(メコン・ウオッチ)

2014-09-02 20:28:29

サイソンブン県ホム郡の影響村の様子(2012年7月撮影)。
ダムが建設されれば、水田耕作・野菜栽培・焼畑耕作・牧畜等
で生計を立てているモン族の住民は移転を余儀なくされる。
サイソンブン県ホム郡の影響村の様子(2012年7月撮影)。 ダムが建設されれば、水田耕作・野菜栽培・焼畑耕作・牧畜等 で生計を立てているモン族の住民は移転を余儀なくされる。
サイソンブン県ホム郡の影響村の様子(2012年7月撮影)。
ダムが建設されれば、水田耕作・野菜栽培・焼畑耕作・牧畜等
で生計を立てているモン族の住民は移転を余儀なくされる。


8月14日(木)、アジア開発銀行(ADB、中尾武彦総裁)の理事会は、ラオス政府と民間企業が共同で建設するナムニアップ1水力発電所事業に対して、1億4,400万ドル(約144億円)の民間セクター融資を供与する決定を下しました。

国際金融機関による大規模ダムへの支援に反対することを国策とする米国理事は棄権票を投じましたが、日本理事は融資に賛成したものと思われます。

 

ナムニアップ1がラオスの開発に有益かどうかは、ラオスの人びと、とりわけダム建設によって移転を余儀なくされる先住民族が意思決定に加わって判断されるべきものです。この点は、ADBも自らの環境社会保全政策で強調しています。しかし、現在のラオスでは、ナムニアップ1のような国策事業に対して、人びとが異議をとなえることは不可能です。特に、2012年12月、社会活動家ソムバット・ソムポーン氏が何者かに誘拐され失踪して以来、ラオス国内で活動するNGOやNPOも自重の傾向をいっそう強めています。

 

メコン・ウォッチでは、米国のNGOインターナショナル・リバーズと協力して、こうした状況をはじめ、ナムニアップ1をめぐる問題点を取り上げ、ADBの職員・理事や日本政府/財務省と協議を重ねてきました。その結果、文書の公開などいくつかの点で改善は見られたものの、環境社会上の根本的な問題は解決されることなく、融資の決定が下されました。そこで、未解決の問題点をまとめた共同声明(英語)を作成・公開しましたので、ぜひ、ご一読下さい。以下のサイトから、PDFでご覧になれます。
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20140829ENG.pdf

 

なお、この声明では、環境社会上の問題点を列挙した上で、ナムニアップ1への融資を実効に移さないこと、ラオスの水力発電セクターへの支援自体を見直すことを提言しています。

 

ナムニアップ1は、関西電力の子会社が45%を出資するナムニアップ電力会社がラオス中部のナムニアップ川(メコン河の支流)で建設を進める水力発電ダムで、建設工事を大林組が受注し、国際協力銀行(JBIC)も融資を検討するなど、日本から東南アジアに向かう民間・公的資金の最近の動向を象徴する開発事業です。【注1】
【注1】ナムニアップ1については、以下のサイトをご覧下さい。
http://www.mekongwatch.org/report/laos/laos_nn1.html

(文責 土井利幸/メコン・ウォッチ)

 

http://mekongwatch.org/resource/news/20140901_01.html