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メコン本流ダム建設問題 「全てのダム建設の中止を!」メコン河の漁師の声(メコン・ウォッチ)

2014-09-18 15:42:43

ソムポーンさん(向かって左)、ソジェットさん(同右)
ソムポーンさん(向かって左)、ソジェットさん(同右)
ソムポーンさん(向かって左)、ソジェットさん(同右)


2014年9月17日、バンコクのチュラロンコン大学において、NGO、Fishery Action Coalition Team (FACT)とTowards Ecological Recovery and Regional Alliance (TERRA) の協力により、カンボジアのトンレサップ湖とタイのムン川漁民が自分たちの暮らし、魚、それに影響するダム開発について語るトークセッションがありました。

この数日前には、トンレサップの住民は、パクムンダムの影響地を訪問、住民の経験を聞き、ダムの影響をより深く理解したと言います。セッションで住民代表のお二人は、ラオスで建設が進むドンサホンダムに対する懸念を表明、今後も様々な方法で反対を表明していくと語りました。

以下に、パクムンダム影響住民ソムポーン・ビエンチャンさん、トンレサップ湖漁民グループ代表ロン・ソジェットさんの「声」の一部をお伝えします。

また、ドンサホンダムについてはこちらをご覧ください。 http://www.mekongwatch.org/report/tb/Donsahong.html

 

ソムポーン・ビエンチャンさんの話 (パクムンダムの影響住民)

ムン川沿いで暮らす私たちは、メコン河からムン川に回遊する魚で暮らしを立てていました。パクムンダムが出来て魚が獲れなくなり、農業をしていない私たちは、以前のように米と魚を交換することはできず困窮し、かつ孤立しました。

20数年前、社会は私たちの暮らしを理解してくれなかった。

魚のためにダムに反対した私たちは、「発展」に反対する悪人、叛乱者として扱われました。しかし、私たちが川を守らなければ、誰が子供たちの生活を守るのか、と立ち上がったのです。政府はダムに魚道を付けて影響を緩和するとしたけれど、問題は解決しなかった。放流事業なども行われたが、効果はなかった。それらはトンレサップや下流からやってくる自然の魚に代わるものではなかったのです。また、私たちの土地は豊かではなく、潅漑設備ができても農業では生活はできません。

パクムンダムについては、いろいろな調査が行われ、最終的に5年間の水門開放の提言をする結果がでましたが、政府はそれを受け入れなかった。私たちは漁ができないため出稼ぎに行った子供たちが村に帰ってこられるよう、パクムンダムの水門を開けて欲しいと思っています。

しかし、ドンサホンダムが出来てしまったら、ムン川に魚は帰ってきません。もう一度、パクムンダムの悲劇を味わうことになる。メコン河は誰か特定の人のものではありません。みんなものです。私たちはこのダムの建設に強く反対しています。

 

ロン・ソジェットさんの話(トンレサップ湖漁民グループ・リーダー)

トンレサップから来ました。メコンの本流に出来るダムについて、非常に懸念を持っています。トンレサップ湖は非常に重要です。季節ごとの湖の拡大と縮小は、湖の周りに肥沃な土をもたらしています。水の変動は水質も改善しています。周辺には広大な湿地林が広がっています。浸水林は生物多様性のホットスポットです。

年間何十万トンもの漁獲は周辺の400万人の暮らしを支えています。私は農業の技術を持っておらず、漁業だけで暮らしてきた。自分たちは水に精霊がいて、私たちの暮らしを守っていると信じています。また、子供が生まれた時、魚の名前をつけた。魚は自分の暮らしを支えている大事なものだからです。メコン河とトンレサップは体に例えれば血管のようなものです。

世の中に問いたい。

もし水力発電ダムがどんどんできて、水が不自然に上下するようになったら、水と共に暮らす私たちはどうやって生きていけばいいのでしょうか。トンレサップ湖とメコン河沿いに暮らす人びとは、ダムはいらないと考えています。水力発電ダムが重要なのは分かります。しかし、私たちは水と魚に依存して生きています。魚がいなくなれば生きていけません。

 

(文責:木口由香/メコン・ウォッチ)

http://mekongwatch.org/resource/news/20140917_01.html