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太陽光発電は本当に環境に優しいか? 製造段階での水酸化ナトリウムなどの化学物質やCO2排出+廃棄物(National Geographic)

2014-11-14 21:40:39

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solarreitikx4E6t0Iorw世界中でクリーンなエネルギーが求められるなか、太陽光を使った発電量はこの5年間で6倍に増加した。だが、ソーラーパネルの製造が環境にむしろ悪影響を及ぼしている可能性が現在指摘されている。

 

パネルの製造には水酸化ナトリウムやフッ化水素酸といった腐食剤の使用が欠かせない。また製造過程で水や電力が消費されるため、温室効果ガスの排出は避けられず、廃棄物も出るのが実状だ。

このたびソーラーパネルのメーカー37社を格付けしたソーラー・スコアカード(Solar Scorecard)が新たに発表され、中国企業のトリナソーラー(Trina Solar)に続いて、カリフォルニア州のサンパワー社(SunPower)が最上位にランクインするなど、数社が格付けを上げた。

ソーラー・スコアカードは、1982年からハイテク企業の環境への影響を調査しているサンフランシスコ拠点の非営利組織、シリコンバレー有害物質問題連合(SVTC)によって毎年作成されている。5回目となる今回の調査では。持続可能な製造方法を実践しているかについて、業界全体で不透明になっているという結果が示された。

SVTCはスコアカードを発表することで、生き残りと成長に重点を置きがちな業界に透明性が増すことを期待している。

◆化学物質や排出量に関する不十分なデータ

SVTCは、排出量や化学物質の毒性、水の使用量、リサイクル率といった企業の自己申告データを基にスコアカードを作成している。事業に関する詳細なデータの共有に協力的な企業が減っているなか、SVTCは3位のインリーソーラー(Yingli Solar)と4位のソーラーワールド(SolarWorld)が毎年調査に協力し、持続可能な事業の展開に積極的であると高く評価している。

一方、環境影響を考慮しない企業が市場に参入し、安い価格でシェアを獲得していくと、持続可能性を優先課題にする企業が少なくなるとSVTCは懸念している。

国ごとに異なる規制や製造法の違いによって、光電池の環境影響に関する標準的なデータを得ることは難しい。ノースウェスタン大学とアルゴンヌ国立研究所が今年5月に発表した研究報告によると、中国製のパネルに係る二酸化炭素の排出量はヨーロッパ製のパネルのおよそ2倍で、環境基準の低さや石炭火力発電所の多いことが起因している。

中国では既に反動が起きている。例えば、パネルメーカーのジンコソーラー(Jinko Solar)は、浙江省の工場から出た有毒廃棄物を付近の河川に流した。住民は反対運動を起こし、会社を告訴している。

米国のパネルメーカーは連邦と州の規制を受け、有害廃棄物を含む排水の方法と場所が厳しく定められている。欧州では、有害電子廃棄物の排出削減と適切な廃棄方法を定めた規制が最近になって設けられた。

規制などの違いから、ソーラーパネル市場で正確なデータを得るのは難しいと研究者は指摘する。

それでも、現段階でソーラーパネル産業に透明性を増すことは、今後のパネル事業の良い模範になるとSVTCは期待している。

まだ早いリサイクル

ソーラーパネルのリサイクルは、古いパネルを処理する施設の不足と、利益が出るほどまだ廃棄されていないという二重の課題を持つ。

パネルには銀やテルル、インジウムといったレアメタルが使われているため、リサイクルは特に重要であると、サンノゼ州立大学の環境学助教授でSVTCの科学アドバイザーを務めるダスティン・マルバニー(Dustin Mulvaney)氏は述べる。

だが、リサイクルが制限されることで、これらの回収可能な金属が廃棄処分されかねない。

現在製造される光電池のほとんどはシリコンでできている。シリコンは豊富に存在するが、「シリコンベースの光電池を製造する過程で多くのエネルギーが消費される」と5月に発表された研究の共著者で、ノースウェスタン大学工学科の助教授フォンチー・ヨウ(Fengqi You)氏は語る。

SVTCによると、グリーンビルディング協会の「エネルギーと環境に配慮したデザインにおけるリーダーシップ(LEED)」プログラムに類似した、ソーラーパネルに関する初めての持続可能性基準が今後2年以内に設定される予定だ。

発電という観点では既に十分な環境的信頼を獲得しているソーラーパネル業界だが、この先大きな変化を生じるほどの外圧に直面するかどうかはまだわからない。

業界が成熟するにつれ、パネルメーカーがより厳しい持続可能な対策を採用するだろうといった楽観的な見方もある。SVTCがスコアカード調査を開始してまだ5年だが、既に変化が見られるとマルバニー氏は述べている。

 

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20141113003