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ベトナム政府、メコン本流ダム開発に反対の論調を強める(メコンウォッチ)

2014-12-27 17:47:57

The Mekong River is a trans-boundary river running through China, Myanmar, Laos, Thailand, Cambodia, and Vietnam (Photo: mothegioi)
MekonLowerSesan2pic1メコン河最下流に位置するベトナムが、本流での水力発電ダム開発への反対の論調を強めてきたようです。

Thanh Nien News紙(12月23日)は、国家メコン委員会の副報道官の「(ドンサホン・ダムが運転を始めれば)生き残る魚はわずかだ」ということばを紹介し、Vietnam News Agency(VNA)も25日の報道を通して、南部カントー市で開催された会議の席上、農林水産関係の専門家が、ドンサホン・ダムによるデルタ地帯の農業への甚大な被害を指摘したと伝えています。

 

また、21日付のVNAによれば、20日にタイ・バンコクで開催された第5回大メコン圏(GMS)首脳会談のスピーチで、Nguyen Tan Dungベトナム首相が、メコン河流域諸国に対して、「メコン河の水資源の持続的な利用と管理に対する責任感を強めよう」と呼びかけました。

 

ドンサホン・ダムをはじめ、メコン河本流ダム建設へのベトナム政府の強い反発は、カンボジア国内でも、新聞やテレビ(3チャンネル)を通じて報道されているようです。Phnom Penh Post紙(12月25日)によると、カンボジア政府の水資源大臣や国家メコン委員会関係者も、ラオス政府に対し建設延期と追加調査を呼びかけています。

 

しかしながら、12月24日付Radio Free Asiaの報道によると、ラオス政府は2015年初頭にもドンサホン・ダムの本体工事に着手するとして、近隣諸国の意見に耳を貸そうとしません。これまで、「東南アジアの最貧国」とされてきた小国ラオスが、メコン河の保全と流域諸国の協調にとって大きな脅威となりつつあります。

 

以下では、Thanh Nien News紙(12月23日)の報道全文を日本語訳でご紹介します。それ以外の報道については、見出しとリンクのみをご紹介します。

 

・「ラオス・ドンサホン・ダムに対して高まる懸念」 (Concerns raised on Laos’ Don Sahong hydroelectric plant)VNA(12月25日)
http://english.vietnamnet.vn/fms/environment/119571/concerns-raised-on-laos–don-sahong-hydroelectric-plant.html
・「首相、メコン河の持続的な管理を呼びかけ」 (PM calls for sustainable management of Mekong River water)VNA(12月21日)
http://www.saigon-gpdaily.com.vn/National/2014/12/111948/
・「ベトナム政府、ドンサホン・ダムを酷評」 (Vietnam slams Don Sahong)Phnom Penh Post(12月25日)
http://www.phnompenhpost.com/national/vietnam-slams-don-sahong
・「ラオス政府、2015年初頭にドンサホン・ダムの建設を開始」 (Laos to Break Ground on Don Sahong Dam in Early 2015)Radio Free Asia(12月24日)
http://www.rfa.org/english/news/laos/dam-12242014141437.html

 

ベトナムの委員会がラオスのダムに反対


 

2014年12月23日
Thanh Nien News


月曜日にハノイで開催された会合の席で、ベトナム国家メコン委員会は、ラオスがこのほど建設を進めているドンサホン水力発電ダムに対して、さらなる反論を展開した。

ベトナム通信(VNA)の報道によれば、同委員会のNguyen Hong Phuong副報道官は、「ドンサホン・ダムが建設地付近で多種多様な魚の回遊路となっているフーサホン分流を遮断する」と述べた。

Phuong副報道官は、水力発電の専門家を聴衆にして、「ドンサホン・ダムのタービンが回転すれば、生き残る魚はわずかだろう」と語った。

また、Phuong副報道官は、260メガワットのドンサホン・ダムが、フーサホン分流の生態系および周辺の人びと、とりわけ漁業で暮らす人びとの生計に被害を及ぼすとした。

出席者からは、ドンサホン・ダムが、ラオスとカンボジアそれぞれに生息する絶滅危惧種のイラワディ川イルカの最後の群の生存を脅かすとの声が上がった。

ベトナムの政府関係者、専門家、デルタ地帯の住民は、このところドンサホン・ダムを批判し、下流に位置するベトナムの住民は、上流の中国のダムが引き起こす塩害および河岸崩落によってすでに被害を受けていると主張している。

中国は、メコン河上流に7ヶ所のダムを建設し、20ヶ所が計画ないし建設中である。

ラオスとカンボジアは、さらに11ヶ所のダムを計画しており、その中には2012年に建設が始まったサイヤブリ・ダム(総額38億ドル)も含まれている。

原文(英語)は、以下で参照可能
http://www.thanhniennews.com/society/vietnamese-committee-opposes-laos-new-dam-36658.html

 

(文責・翻訳 土井利幸/メコン・ウォッチ)

 

http://mekongwatch.org/resource/news/20141227_01.html