アジアインフラ投資銀行での孤立不参加は 外務・財務両省の”お粗末情報”の結果。日経が報道(FGW)
2015-04-15 13:17:45
日本経済新聞の15日の報道によると、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバーに安部政権が参加を見送った大きな理由に、外務省と財務省が全く方向違いの情報を官邸にあげていた点があったという。
日経の報道によると、3月12日、西側先進国のトップで英国がAIIB参加を表明したが、外務省はそれまで「英国が参加する確たる情報はない」と官邸に伝えていたという。外務省だけではない。
中国は昨年、日本にも直接、参加を打診、有利な条件を提示していたが、この際、官邸は財務省に確認したところ、「主要7カ国(G7)からの参加は絶対ない」との情報が戻ってきたという。
外交を担当する外務省、財政政策を担当する財務省が、ともに「先の読めない情報」を官邸にあげるだけでは、さすがの安部首相もかわいそうだ。まさか両省とも、安部首相の足元をすくおうとして”逆情報”を提供したわけではないだろうが。
こうした「お粗末情報」しかインプットされていない安部首相は3月9日、来日したドイツ首相のメルケルには次のように働きかけたという。「中国から3月末までに申請するようせかされるが、中国にはいろいろな条件をクリアしてもらわないといけない。一緒に頑張りましょう」と。
メルケルはその場では「そうですね」と応じた。だが、わずか1週間後に独財務相のショイブレが参加を表明した。この経緯をみると、日本が参加に動かないことを確信して、ドイツは参加を決意したとも読める。さらに、オーストラリアのアボット首相には昨年、「慎重な判断を」と伝えていたが、中国が申請期限としたギリギりになって参加の道を選んだ。その間のオーストラリアの変化の情報が官邸に伝わっていたかも定かでない。
国際交渉、外交の世界は、利害関係、駆け引き、取引等によって常に変化がつきものである。「アメリカが慎重だから、G7も慎重」といった時代はとっくの昔に消え去っている。アメリカ自体も、単に中国と対立して参加に慎重なのではなく、あわよくば米中二国間で膨大な中国、アジアのインフラ需要を山分けしようという戦略を練っていたフシがあり、そこを利に敏い英国が気付いたとの見方もできる。
アメリカの情報のおすそ分けをしてもらっていれば大丈夫、という「戦後体制」こそを改革するのが政治面でのアベノミクスであるはずだ。それは、情報オンチの外務省、財務省を抜本改革することでもある。
第二次大戦の最大の敗因が、アメリカの国力を見誤った当時の政府・軍部のお粗末情報体制にあったことは言うまでもない。戦後70年、霞ヶ関のお粗末情報体制が改善されておらず、その上に乗っかって危うい外交を展開している安部首相の足元は、極めて不安定といわざるを得ない。そのツケは、結局、国民に回ってくる。