HOME11.CSR |企業経営者とラグビー交流 茨城県の少年院で支援のトライ(東京)「防犯CSR」の好事例 |

企業経営者とラグビー交流 茨城県の少年院で支援のトライ(東京)「防犯CSR」の好事例

2015-05-16 14:45:41

「少年院を出た後の就職先を広げるモデルとして、全国に広がってほしい」と話す小沼公道さん=茨城県高萩市で
「少年院を出た後の就職先を広げるモデルとして、全国に広がってほしい」と話す小沼公道さん=茨城県高萩市で
「少年院を出た後の就職先を広げるモデルとして、全国に広がってほしい」と話す小沼公道さん=茨城県高萩市で


茨城県茨城町の少年院「水府(すいふ)学院」で今年から、入院少年と企業経営者らのタグラグビーの交流試合が始まった。

 

犯歴などを理解した上で、出院した少年らを雇う「協力雇用主」になってもらい、就職先の確保につなげる目的。法務省は「協力雇用主を増やす目的でのスポーツ交流は聞いたことがない」としている。 (宮本隆康)


 

水府学院に入っているのは、十五~十七歳の約六十人。元ラグビー日本代表の故石塚武生さんらが二〇〇七年から年二回ほど、少年たちの指導を始め、現在は元慶応大監督の上田昭夫さん(62)らが受け継いでいる。指導に協力する県ラグビーフットボール協会が昨年、「少年院と社会をつなぐ機会を」と交流試合を発案した。




 

水戸市で行政書士事務所を経営する橋本哲さん(47)が、市内のロータリークラブのラグビー経験者らに参加を呼びかけた。尻込みする人や直前にキャンセルする人もいたが、自動車整備や精密機械製造、不動産業などの企業経営者五人が集まった。




 

交流試合は二月、学院の体育館であり、ラグビー協会員や企業経営者ら約二十人と、少年約六十人が一緒に汗を流した。タグラグビーは、タックルなど危険なプレーを行わない手軽なスポーツ。試合後に握手を交わし、企業経営者らに見送られて体育館を出る時、目を潤ませる少年もいたという。




 

後日、少年たちは企業経営者らにあてて手紙を書いた。「見守ってくれる人を二度と裏切ってはいけない。涙が出そうになるぐらい心が痛くなりました」「ここを出ても非行少年と言われるかもしれませんが、支えてくれる方々がいると思うと孤独も感じません」と、感謝の言葉がつづられていた。




 

仲立ちをした橋本さんは「先入観があり不安だったが、普通の子どもと変わらない顔つきで驚いた。法に触れるようなことをしたのは、環境が原因だったのかと思った」と振り返る。「トライを決めて、はにかんだ笑顔が、社会に出てからも見られるようにしたい。交流試合を続ければ、遠くない将来、雇用する企業が出るのではないか」と期待する。




 

水府学院では、六月にも第二回を計画中。県協会の小沼公道副理事長(56)は「参加してくれた経営者は五人しかいないのが、今の現実」とするが、その反応には手応えを感じている。「モデルとして全国に広がってほしい。美談じゃない。やらなきゃいけないことだと思っている」と話した。


 

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015051602000241.html