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世界遺産隣接の石炭火力発電所計画 ユネスコ委員会が対応に苦慮。金融機関のファイナンスが決め手に。まさか日本の銀行が動かないでしょうね(FGW)

2015-07-08 22:06:16

sundarupasu世界遺産・スンダルバンス国立公園

 国連教育科学文化機関(UNESCO)の世界遺産委員会は、日本の「明治日本の産業革命遺産」の登録を認めたが、政治案件に苦慮した同委員会は別途、開発と文化遺産維持の対立案件も抱えている。バングラデシュが世界遺産のスンダルバンス国立公園の隣接地に石炭火力発電所を建設する計画を立てているためだ。同計画の成否は海外の金融機関が資金を拠出するかにかかっており、環境NGOらは日本の金融機関を含めて、金融機関への圧力を強める姿勢をとっている。

 

 スンダルバンス国立公園はインド東部のバングラデシュとの国境地帯に広がるベンガル湾沿いの世界最大のデルタ地帯。ヒマラヤから流れ出たガンジス川とプラマプトラ川が運び出す土砂によって形成された豊かなマングローブ林等で構成され、ベンガルトラなどの生息地でもある。1987年に世界遺産に登録され、隣接するバングラデシュのシュンドルボン地方も1997年に登録されている。

 

 バングラデシュ政府はこのうち、スンダルバンス公園の近くのランパールに石炭火力発電所建設計画を承認した。事業はインドの National Thermal Power Corporation (NTPC) とバングラデシュ政府の電力開発委員会が共同で立案している。同時に必要資金のうち10億ドルを海外の金融機関から調達する計画という。

 

 発電所の用地は、スンダルバンス公園の保護林の上流14kmのところに確保されている。バングラデシュ政府は、公園への影響は十分に遮断される距離、と説明してきた。しかし、広大な同地域にはベンガルトラのほか多数の貴重な生態系が維持されているほか、100万人以上の原住民が漁業等で生活しており、これらの生態系,生活圏への影響も十分な説明がなされていない。

 

このため世界遺産委員会は、バングラデシュ政府に対して、十分な環境影響調査とともに、同委員会の専門家によるモニタリングの実施を求めている。バングラデシュ政府はいったん2月に調査報告書を委員会に提出したが、内容が不十分として追加調査を求められている。こうした手続き面の対応とともに、焦点として浮上しているのが、同事業へのファイナンスの行方である。

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 欧米の年金基金の間では、COP21を見据えて、温暖化に影響の大きい石炭関連の投融資資金を引き上げるDivestmentの動きが広がっている。今回のバングラデシュの案件でも、NTPCを投資対象としていたノルウェーの年金基金が、同社株から5600万㌦の資金を引き上げたほか、有力な融資資金供給先とみられていたフランスのBNPパリバやクレディアグリコなど複数の金融機関も、同プロジェクトへの融資見合わせ宣言をするなどの動きが広がっている。

 

国際環境NGOのBankTrackは、「ランペール発電所計画は、国際プロジェクトファイナンス金融機関が設定するエクエーター原則に抵触する」として、他の金融機関も資金供給しないよう要請している。ただ、同事業は実質的にインド・バングラデシュ両国の政府が関与した国家プロジェクトだけに、日本のメガバンクをはじめとする金融機関の動きにも関心が集まっている。

 

 日銀のまとめでは、海外での投融資で日本の金融機関の存在感が年を追うごとに高まっている。2015年3月末の邦銀全体の海外投融資残高は3兆3800万㌦(約410兆円)で、米銀総額を超えて、英銀に迫る勢いという。特にその多くがアジア諸国に集中していることから、邦銀によるファイナンスの可能性も問われている。

http://whc.unesco.org/