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「平和経済研究所」の2015年世界平和度指数 日本は8位でベストテン堅持。安保法制が成立すると米国並み、あるいはそれ以下に急落へ(?)(RIEF)

2015-07-28 00:26:22

https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=watAHldDB9g#t=0

 国際的研究機関の「平和経済研究所(Institute for Economics and Peace:IEP)は2015年の世界平和度指数(Global Peace Index)を発表した。それによると、世界は平和と繁栄を享受できる国々と、暴力と衝突の負のスパイラルに落ち込む国々とに、二分される傾向がますます強まっている、と指摘している。

 

  IEPは毎年、調査対象国の「平和度」を数字化してランキングを発表する。「近隣諸国との関係」「武器の輸出入」「暴力的なデモの可能性」など23項目にわたる平和に関係のありそうな基準に基づいて各国のスコアをつけ、全部を平均したものを総合スコアとしてそれぞれ比較し、対象162か国を5段階評価で、ランク付けしている。

 

 スコアは、数字が低いほど平和度が高いことになる。例えば2015年の平和度第1位のアイスランドは「外国での紛争に参加」と「武器輸入」が「2.0」である以外はすべて「1.0」で、総合スコアは「1.148」だった。

 

 2位にはデンマーク、3位オーストリアとトップ3は欧州勢で占められいる。4位に太平洋州のニュージーランド、平和憲法を抱える日本は162か国中の8位で前年と同じ順位だった。日本のスコアは「1.322」。その他の国では、米国が94位、中国124位、インド143位、ロシア152位、北朝鮮153位、最下位162位はシリアなど。

 

 日本のスコアは、多くの基準が「1.0」だったが、重火器の所有件数のスコアが「2.6」、さらに「隣国との関係」が「3.0」と極めて悪かった。前者はやくざ組織の保有とみられる。

 

 日本が安保法制を成立させると、日本のスコアと順位がどこまで変動するかは、法案の行方とは別に、興味を引く点である。安保法制が成立して、日本が米国と軍事的共同歩調を表だってとるようになると、平和度のスコアは逆に米国並みに下がるとみたほうがいいのか。あるいは、米国とは異なって、スコアのもっと悪い中国、ロシア、北朝鮮に周囲を囲まれているため、日本のスコアは米国よりも下に下がるとみるべきか。

 

 peaceキャプチャ

 今回の分析では、2014年の1年間、世界各地で発生した紛争のために費やされたコストを14兆3000億㌦、世界のGDPの13%に相当する、と推計した。この資金規模は、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、スペイン、英国のGDPを合計した額と同じ規模の資金が紛争で消失したことになる。

 

 また、世界で顕著に起きているのは、国際間の戦争よりも、国内紛争の激化だと指摘している。国内紛争による死者は、2010年では4万9000人だった。これが2014は3.6倍の18万人に増えた。テロで殺された人は2013年だけで1万8000人、前年比61%の急増だ。そのほとんどがイラク、アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリア、シリアの国々に集中している。

 

 前年以降の変化としては、81カ国が「より平和」(more peaceful)になったが、反対に78カ国の「事態が悪化」(deteriorated)した。世界で最も平和な地域は欧州で、ベスト20のうち15カ国は、前述のようにトップ3を含めて欧州諸国が占めた。

 

 反対に、世界で「最も平和でない」(least peaceful)地域は中東と北アフリカ。これらの地域ではテロ活動が最も盛んであり、国内の反政府運動も盛んに行われている。


 今回の報告書には “POSITIVE PEACE”(前向きの平和) という見出しのセクションがある。その説明として以下のような内容が紹介されている。

 

 「平和とは単に紛争がない状態以上のことを指す。Positive Peaceとは、平和な社会の基盤を強固なものとする人びとの姿勢、社会的な構造、そして伝統・慣習などを指すものと理解することができる。この調査によるならば、Positive Peaceのレベルが高い国ほど反政府の抵抗運動などが暴力化する可能性が低く、自分たちの要求に対する妥協を国家から引き出す可能性が高い」

 

 安保法制や反原発、沖縄の辺野古基地反対運動など、いずれの市民活動も、ヘイトスピーチ等による挑発を受けても、暴動化したり、過激化する兆候はほとんどない。むしろ若者たちや若い母親たち、高齢者たち、あるいは政党の枠組みを超えた支持者たちの参加が増えていく傾向にある。

 

 これは、ひょっとして、戦後70年の間に、我が国の市民社会には、こうしたPositive Peaceの考え、理解が、知らず知らずのうちに、根付いていきたのかもしれない。Positive Peaceな日本。そう考えるのは、甘いだろうか。

http://www.visionofhumanity.org/#/page/our-gpi-findings