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日本はなぜシリア難民受け入れを表明しないのか。 緒方貞子さん「難民受け入れは、積極的平和主義の一部」と政府を批判(各紙)

2015-09-25 17:34:24

ogataキャプチャ

 欧州各国を揺るがしているシリア難民受け入れ問題。米国、オーストラリア、南米諸国なども受け入れを拡大している。その中で、日本政府の動きの鈍さが”異彩”を放っている。緒方貞子・元国連難民高等弁務官は朝日新聞の取材に対し、「難民の受け入れくらいは積極性を見いださなければ、積極的平和主義というものがあるとは思えない」と政府の姿勢を批判した。

 

 日本では昨年、5千人が難民申請をしたが、昨年以前に申請されたものを含めて、昨年1年間に認定したのは11人だけ。またこれまで日本に難民申請したシリア人は60人で、そのうち認定されたのはわずか3人。30人は「人道上の理由」で長期滞在許可を得ている。

 

 亡命に厳しい韓国でも57人のシリア難民の申請を認めた、とされ、日本は韓国以下ということになる。また、国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルによれば、日本がシリア難民に提供している住居は「ゼロ」。主要国で住居提供を全くしていないのは日本のほか、ロシア、シンガポール、韓国だけという。

 

 欧米のメディアでもこうした日本の難民受け入れ姿勢に疑問を示す報道が増えている。ロイターによると、日本は「難民の保護と移住の計画に欠けること」「申請を処理するシステムの機能不全」があり、難民申請から処分決定までに平均3年、長い場合は4〜5年かかるケースもあると指摘している。

 

 また、欧米と違って、日本では難民であることの立証責任を、本人に求める仕組みのため、命一つで逃げて来た難民には大変、厳しい関門となっている。その一方で、日本企業は、「研修」の名目で、低賃金の単純労働者をアジア諸国から受け入れ、拡大している、と政策の不整合を批判する声もある。

 

 朝日新聞のインタビューに応じた緒方貞子さんは、1991年から2000年まで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のトップとして世界の難民問題に対処した。その経験から、「当時から日本に難民を受け入れてもらうのに苦労した。変わっていないのは情けない話だ」と述懐した。「難民の受け入れは積極的平和主義の一部だ。開発援助も、底辺に届くようなものをどれだけやるかだ」と話した。

 

 また、日本で難民申請をした約60人のシリア人のうち、日本政府が難民と認定したのが3人にとどまっていることについて「シリア情勢に対する日本の無知ではないか」と厳しく批判した。「日本を目指して逃げてくる人は少ない」としながらも、日本に着いた人びとについては、難民としての保護を検討すべきだとの考えを示した。

 

 「日本は島国だから」といった無邪気な反応は、緒方さんが看破するように、国際社会から「無知」としかみられない。グローバル社会の時代は、負担の共有・支援は当然の責務である。4年前の東日本大震災と東電福島原発事故の際、どれだけの数の世界の人々から支援され、助けられたか。「日本人はもう忘れている」と指差されないためにも、積極的平和主義を国全体で実践する必要がある。

 

 参考記事:http://www.huffingtonpost.jp/2015/09/23/refugees-japan-ogata-sadako_n_8186670.html?utm_hp_ref=japan