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「ピケティの世界」さらに顕著に。 世界の最富裕層1%の保有資産、残る99%の総資産額を上回る(Oxfam)

2016-01-18 15:59:46

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 ダボス会議前に発表された報告書では、世界の上位1%が残り99%より多くの富を所有することが明らかになりました。

 世界の格差が急激に拡大する中、世界で最も裕福な62人が世界の貧しい半分の37億人の総資産に匹敵する資産を所有することが明らかになりました。この62人という数字がわずか5年前には388人だったことが事態の深刻さを示しています。



1月20日からから23日にスイスのダボスで開催される世界経済フォーラム(通称ダボス会議)に先駆けて、オックスファムは、2014年、2015年に引き続き、格差に関する最新の報告書を発表します。以下、オックスファムの新たな報告書「最も豊かな1%のための経済」の要旨です。

 

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・ 世界の貧しい半分の総資産額は、2010年と比較して1兆ドル、41%減少。同時期、世界人口は4億人増加。


・ 一方で、世界の最も裕福な62人の資産は、5000億ドル以上増加し、1.76兆ドルに。


・ 男女の格差も顕著で、世界で最も裕福な62人のうち男性は53人。女性は9人に過ぎない。

 

各国首脳から様々な国際機関が格差に取り組むことの必要性について訴えており、昨年9月には国連の持続可能な開発目標(SDGs)の一環としても、世界は格差に取り組むことに合意しました。しかし、この12ヶ月間で格差は縮まるどころか広がり、昨年のダボス会議に先駆けて発表されたオックスファム報告書で予見された「世界の1%が残り99%より多くの富を所有する」という現実は、オックスファムの予想よりも1年早い、2015年内に実現してしまいました。

 

極度の格差は、貧困を克服するためのここ25年間の取り組みを無駄にしてしまう可能性があります。貧困の克服に取り組んできたオックスファムは、深刻化するこの格差に課題に世界は取り組む必要があると考えます。最優先事項として、裕福な個人や大企業が租税回避のために活用するタックスヘイブンの問題に対処しなければなりません。タックスヘイブンの活用による租税回避によって、なされるべき社会への還元がなされていません。各国政府は、税収入の減少により、貧困、そして格差の問題に対処するための重要な財源を失っています。

 

数十人の人々が、世界の半数の人々以上の富を有している現状を私たちは受け入れるべきではありません。世界中で格差の問題が声高に叫ばれていますが、具体的な取り組みは成されていません。世界の格差は急速に深刻化しています。何百万人もの人々が食べることもできず、貧困に苦しむ世界で、最も裕福な人々にさらに資源と富が集積していくことが望ましいのでしょうか。

 

ダボス会議に集う政府代表や大企業など世界のエリートは、タックスヘイブンの時代に終止符を打つためにそれぞれの役割を果たさねばなりません。世界の富裕層そして多国籍企業は、社会が機能するための大前提である納税義務を果たしていません。世界の大企業の201社のうち188社が少なくとも一つのタックスヘイブンに登記していることがこの事実を物語っています。

 

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オックスファム・インターナショナル事務局長 ウィニー・ビヤニマ

2015年、G20各国政府は、BEPS協定の合意を通じて多国籍企業の租税回避の問題に取り組むことに合意しました。しかし、その合意内容は、タックスヘイブンの課題にはほぼ触れていません。世界的に見て、タックスヘイブンで保有される個人資産は、約7.6兆ドルと言われています。この資産に対して本来支払われるべき税金が各国政府に納められた場合に捻出される税収入は毎年1900億ドルにのぼります。

 

アフリカの金融資産の30%がタックスヘイブンにて保有されていると予測され、このことによって毎年140億ドルの税収入が失われています。140億ドルの予算があれば、母子保健の充実などを通して年間400万人の子どもの命を救うことができ、さらにはアフリカのすべての子どもたちが学校に通うために必要な教員を雇用することができます。

 

ダボス会議(世界経済フォーラム)の企業パートナーである10社のうち9社が少なくとも一つのタックスヘイブンに登記されています。多国籍企業による租税回避による途上国に対する損失は最低でも年間1000億ドルと言われています。2000年から2014年にかけてタックスヘイブンに対する企業投資はおおよそ4倍になりました。

 

昨年9月に合意された国連の持続可能な開発目標を達成し、2030年までに極度の貧困をなくすためには、各国政府が企業や個人を含む富裕層からしっかりと税収入を得ることが不可欠です。極度の貧困に暮らす人々の数は1990年から2010年にかけて半分になったものの、過去25年間で最も貧しい10%の収入は年間3ドルも増加していません。これは、各個人の収入が年間1セントも増加していないということです。1990年から2010年までの間、各国の格差が広がっていなければ、貧困を抜け出すことのできた人の数は2億人多かったはずです。

 

本報告書でも取り上げているように、広がる格差の背景にある傾向の一つが、ほぼ全ての先進国、そして大半の途上国に見られるように、労働賃金が国民所得に占める割合の低下です。これに加えて、所得規模における格差拡大も傾向として見られます。所得格差の拡大に加え、タックスヘイブンの活用が、経済における富と権力の集中を促しているのです。

 

オックスファムは、拡大する格差への対処として3本の柱を提唱しています。その一つ目がタックスヘイブンに代表される租税回避の問題です。そして2つ目に、本来確保されるべき税収入は、最も貧しい人々の生活に大きな違いをもたらす保健や教育などの必須社会サービスへの投資に向けられなければなりません。そして3つ目、各国政府は、しかるべき賃金が最も裕福な人々に対してだけでなく、最も貧しい人々に対してもしっかりと支払われるようにしなければなりません。最低賃金を生活賃金の水準に引き上げ、男女間の賃金格差にも取り組まなければなりません。

 

最も裕福な人々は、彼らの富が全ての人々のためになるとはもう言えなくなりました。彼らの極度の富は、病める世界経済の表れです。一部の富裕層に集中した富は、世界の過半数の人々、そして特に最も貧しい人々の犠牲の上に成り立っているのです。

 

オックスファムは、格差の問題に加え、気候変動の問題、そしてシリア危機を含む人道危機への取り組みを各国政府やビジネス界に促すためにダボス会議に出席します。

 

詳しい注記・出典、調査手法などについては、英語版をご確認ください。
Oxfam Briefing Paper “An Economy For the 1%” http://oxf.am/Znhx 
プレスリリース全文はこちらよりご確認ください。
20160118_Davos Inequality_BriefingPaperJPN_FNL.pdf

 

http://oxfam.jp/news/cat/press/post_666.html