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林野庁主導の「緑のオーナー制度」 元本割れ 二審も国に賠償命令 大阪高裁(各紙)

2016-03-01 15:06:16

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  各紙の報道によると、林野庁が、国有林を育成しながら資産形成もできるとして個人から出資を募った「緑のオーナー制度」で、元本割れで損害を被ったとして全国の出資者らが国に計約2億7000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が29日、大阪高裁(水上敏裁判長)で開かれた。判決は一審・大阪地裁判決に続き、国の説明義務違反を認め、79人に対して合計約9900万円を支払うよう命じた。

 

 判決理由で水上裁判長は、2014年10月の一審の大阪地裁判決と同様、1993年6月30日以前の契約では、国が勧誘時に示したパンフレットに元本割れリスクに関する記載がなかったと認定、「出資者が元本割れリスクがないと信じたことに落ち度はない」と指摘した。その後の追加契約分も含めて国の説明義務違反を認めた。

 

 一審判決は出資者にも過失があるとして、3~5割の比率で賠償額を割り引いたが、今回の高裁判決はパンフレットに元本割れリスクを記載していなかった93年6月30日以前に契約を結んだ原告に過失はなかったとして原告の請求どおりの支払いを国に命じた。

 

 ただ、提訴時点で契約から20年以上たっていた出資者ら124人については、国の責任義務違反は認めたものの、損害賠償の請求権が消える「除斥期間」が過ぎていることなどを理由として国の賠償責任は認めなかった。

 

 林野庁によると、緑のオーナー(分収育林)制度は、いままで農山村地域の人々のみに頼っていた人工造林地の保育や管理について、広く都市に住む人々の参加を求め、森林機能を維持するとともに、育成した木々を販売して販売益を持分に応じて得られる仕組み。

 

 1984年度に始まり、現在も募集している。これまでに1口50万円、あるいは25万円で出資を募り、延べ8万6000人のオーナーが全国にいる。対象面積2万5000ha、契約延べ口数は10万口となっている。しかし、2014年度末までに売れた森林1513カ所のうち、元本割れしなかったのは81カ所にとどまる。

 

 収益に相当する山林の立木価格(全国平均)は、制度スタート直後の1985年を100とした場合、2009年時点で、スギが17、ヒノキ25、マツ38などと大幅に低下している(林野庁ホームページのデータ)。

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 一審に続いて高裁でも敗訴した森山裕農相は「国の主張が一部認められず厳しい結果だが、判決内容を慎重に検討し、適切に対応したい」と述べた。

http://www.rinya.maff.go.jp/j/kokuyu_rinya/kokumin_mori/katuyo/owner/tetuzuki.html