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慶応大学矢上キャンパス(横浜) 工事を請け負った大林組が石綿の飛散対策せず 従業員や周辺住民へ飛散の可能性。20~30年後にがん発症リスクも(各紙) 

2016-03-17 22:42:40

keioyagamiキャプチャ

 

 各紙の報道によると、横浜市港北区ある慶応大学の矢上(やがみ)キャンパスで昨年11月、大林組が実施したアスベスト(石綿)を含む実験室の改修工事が、横浜市に無届けでかつ、石綿飛散防止措置を講じていなかったという。

 

 工事を請け負った大林組は、東京新聞の取材に対し、大気汚染防止法が定める事前調査を怠り、石綿の飛散防止措置を講じていなかったことを認めた、という。横浜市は同法違反に当たるとして16日、大林組と慶応大に再発防止を求める行政指導をした。

 

 飛散した石綿を吸い込むと、肺の内部に付着し、中皮腫などのがんを発病する恐れが知られている。しかも、がんの発症は、石綿の吸引から20~30年後になるケースが多い。今回の石綿飛散の影響は、作業員の吸引リスクだけでなく、周囲に飛散したりした可能性も否定できない。

 

 工事業者の大林組は、報道に対して「当社の完全な落ち度。作業員が吸引したり、周囲に飛散したりした可能性は否定できない」とコメントしている。慶応大は近く、学生や教職員に通知し、学内で相談を受け付ける。

 

 慶応大などによると、同キャンパスは理工学部が使用している。今回、改修工事をしたのは1972年完成の6階建て研究棟の2階部分。うち実験室(34㎡)の天井で、断熱材とみられる建材(重さ150kg)に石綿が使われていたという。

 

 工事を請け負った大林組は、昨年11月に2日間にわたり、該当箇所で、作業員3人を使って室内の塗装をはがす作業を実施した。その際、塗料だけでなく、石綿を含む建材も一緒に削り落とすよう命じた。

 

 この作業について情報提供を受けた横浜市は、今月4日、慶応大を立ち入り検査した。その結果、矢上キャンパス内に保管中の建材から国の基準値の86倍の石綿が検出された。

 

 環境省によると、大気汚染防止法では、建物等の解体や改修の際、石綿があるかどうかの事前調査を受注業者に義務付けている。調査結果は書面で発注者に報告しなければならない。石綿があれば、発注者が管轄の自治体に除去工事の実施を届け出なければならない。

 

 この手順は、通常ならば、たいていの建設業者が熟知しているという。しかし、大林組は、現場の担当者が「過去に石綿は除去済み」と思い込み、調査不要と独自に判断し、発注元の慶応大にも報告をしないまま、工事に着手した。

 

 このため工事現場は、一般的な粉じん飛散防止策をした程度で、本来、石綿飛散防止に必要な、排気装置の設置などの、国が定める石綿飛散防止策を全く講じなかった、としている。

 

 この工事に伴って残留していた石綿がキャンパス内に飛散したほか、周辺にも拡散した可能性がある。しかし、横浜市は「既に工事を終えており、飛散有無の確認は難しい」としている。一方、慶応大は学内施設について、石綿の再調査を検討している。

 

 今後、横浜市がすべきことは、学生および、周辺住民に影響が及んだかどうかの確認が最優先だろう。被害が発症するのは、20年~30年先になる可能性があることから、飛散量の把握とともに、長期的なモニタリング体制をどうとるかを早急に決める必要がある。

 

 今回の問題が深刻なのは、工事の際に、換気をしないと仕事にならないほどの粉じんの発生に疑問を感じた作業員が、大林組の現場監督に対して「アスベストではないのか」と何度も訴えたことが明らかになっている点だ。

 

 こうした作業員の指摘に対して、大林組は「前に(アスベストは)除去しているので問題ない」として、聞き入れなかったという。指摘を受けながら工事を続けたことに対して、大林組は「社員教育が不徹底だった」と陳謝しているという。

 

 しかし、3月17日時点で、大林組はそのHPにおいて、この問題について何らの陳謝も説明もしていない。また飛散した石綿を吸引すると、最悪の場合は、死亡するわけで、「社員教育の問題」で陳謝されても、健康は戻ってこない。

 

 「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」(東京)の永倉冬史事務局長は「作業員から指摘されながら、工事を続けた大林組は極めて悪質」と批判。「数日の作業でも大量の粉じんを吸えば、人体への影響はあり、作業員に健康被害の恐れがある。不十分な飛散防止措置で周辺住民への飛散も否定できない」と話している。

 

 大林組の対応は極めて「悪質」なのだ。

 

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