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「パナマ文書」が暴いた租税回避のクモの巣、中心は英ロンドン(AFP) 英国の“闇の顔”が垣間見えた、ということか

2016-04-07 18:17:27

Londonキャプチャ

 

 【4月7日 AFP】世界各国の政府高官や著名人らがタックスヘイブン(租税回避地)を利用した秘密の金融取引に関与していた事実が暴露された「パナマ文書」問題で、英ロンドンが世界中のオフショア・ネットワークを結びつける「心臓」の役割を果たしていたことが明らかになった。

 

  パナマの法律事務所モサック・フォンセカ(Mossack Fonseca)から流出した内部文書は、世界各地のタックスヘイブンに設立された数千の企業が英国と何らかのつながりを持っていることや、秘密資産がどのようにして英国内、特にロンドン市内の不動産に投資されたかを暴き出した。

 

 たとえば、カリブ海の英領バージン諸島には、モサック・フォンセカの顧客企業が11万社も存在していた。有識者らは、英当局が疑わしいカネの流れに目をつぶり、金融業界と近しくなりすぎたため英海外領土のタックスヘイブン利用を取り締まることができなかったと批判を強めている。

 

 オフショア金融サービスとタックスヘイブンの役割について分析した著書「宝島(原題:Treasure Islands)」を記した政治アナリストのニコラス・シャクソン(Nicolas Shaxson)氏によれば、英国そのものは比較的透明性が高くクリーンだが、大英帝国の遺産である海外領土は多くの企業によって「怪しげな取引の外注」先として利用されている。こうした取引はしばしば、所有者不明のペーパーカンパニーを介して行われるという。

 

  「脱税などは、このネットワークの外殻部分で行われる。通常、ロンドンの金融街シティー(City of London)と英法律事務所、英会計事務所、英金融機関が関係する」とシャクソン氏は指摘。ロンドンを中心に「クモの巣」が張り巡らされているとAFPに語った。

 

  「パナマ文書」によると、英国は領内にあるモサック・フォンセカの仲介企業数で世界第3位を占め、3万2682人の顧問を有する。ペーパーカンパニーの設立自体は違法ではないが、犯罪に絡んだ資金洗浄や資産隠しといった不正行為に利用されることがある。

 

 英国の不動産にはタックスヘイブンの企業およそ31万社が計1700億ポンド(約26兆円)を投資しており、このうち10%がモサック・フォンセカと関連があった。

 

 ロンドンでは、ロシアの新興財閥が所有するマンションの外に飾られた豪華な彫像や、高級車ランボルギーニで繁華街ナイツブリッジをわが物顔に疾走する中東の王族など、海外資金の流入をはっきり示す事例に事欠かない。これには、審査が厳しくない金融の都としての合理的な魅力に加え、富に対する自由放任主義、活気に満ちた国際取引の文化と歴史が密接に関与しているとシャクソン氏は言う。

 

 「大英帝国が崩壊したとき、ロンドンは帝国の中枢からオフショア金融拠点に看板をかけ替え、自由なカネの流入を許した」と、シティ大学ロンドンのリチャード・マーフィ(Richard Murphy)教授は語る。「どうやらシティーは、こうした『暗渠(あんきょ)』なしには必要な競争力を維持できないと信じているようだ」

 

 シャクソン氏はこうした現状について「金融機関は、まるで野獣と化してしまった」と述べた。

 

http://www.afpbb.com/articles/-/3083264?pid=0