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オバマ米大統領・広島訪問での「謝罪」の是非問題。「『言葉』よりも、核廃絶に向けた『行動』の要請を」。米「憂慮する科学者同盟」が提起(RIEF)

2016-05-05 00:01:44

hiroshimaキャプチャ

 

 オバマ米大統領の広島訪問に際して、原爆投下への謝罪の是非に関心が寄せられている。だが、科学の悪用防止を目指す米NPOの「憂慮する科学者同盟(Union of the Concerned Scientist)」は、「言葉だけの演説ではなく、核廃絶に向けた具体的な行動をとるべきだ」と指摘、人々に対して、大統領へ直接要請する活動を呼びかけている。

 

 オバマ大統領は、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)直後に、広島を訪問する方向となっている。その際、広島、長崎への原爆投下で、両市合わせて21万人以上の市民が直後に死亡したことへの謝罪をするかどうかが、焦点の一つとされる。

 

 これに対して、アーネスト米大統領報道官は今月2日に、「大統領が日本に謝罪すべきだとは考えていない」と表明した。日本政府関係者も、米国に対して「謝罪は要請しない」との立場を伝えているという。

 

 米国では、原爆投下の責任については、米軍兵士の犠牲を防ぐため、戦争を早期終結するため、日本がポツダム宣言を無視したため、やむなくやった、との説明が戦後一貫してなされてきた。

 

 しかし日本人の多くは、「だからといって、兵士ではない、高齢者、子供、赤ん坊を含む無抵抗な市民を、一瞬にして20万人以上も虐殺、生き残った人にも後遺症の苦しみを与える必要があったのか」との疑問を持ち続けているのではないか。

 

 ただ、「謝罪したくない人々」に、無理に謝罪を強いても、「形だけの謝罪」で終わる可能性もある。それでは死者も浮かばれない。また仮に心からの謝罪の言葉が大統領からあったとしても、謝罪だけで核兵器が地球上から消え去るわけではない。

 

 「憂慮する科学者同盟」が求めるのは、大統領が原爆投下後、初の米大統領として、広島に歴史的な訪問をするならば、核兵器の廃止を改めて世界に呼びかけ、自らもそのための行動を、広島から始めるべきだ、ということだ。

 

 「 But going to one of these cities and giving a speech is not enough. Actions always speak louder than words(広島、長崎のどちらかに行くのならば、スピーチだけでは十分ではない。行動こそが言葉よりも大きく伝わる)」

 

 「同盟」は、米国が今後30年間に1兆㌦も投じ、次世代の核兵器整備をする計画を直ちに停止するよう、人々が大統領に要請するよう呼びかけている。一瞬の誤解、事故等でも人類を破滅に導く核戦争が起きかねない状況を、直ちに停止するよう、人々が大統領に要請するよう呼びかけている。

 

 オバマ大統領は2009年4月5日、チェコの首都プラハのフラチャニ広場で「核廃絶を求める演説」を行った。

2009年のオバマ大統領のプラハ演説
2009年のオバマ大統領のプラハ演説

 

 曰く。「20世紀に自由を求めて共に戦ったように、21世紀には、恐怖のない生活を世界中の人々が送る権利を求めて、我々は共に戦わねばならない。そして核保有国として―核兵器を使用したことのある唯一の核保有国として―、合衆国には行動する道義的責任がある」

https://ja.wikisource.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%90%E3%83%9E%E3%81%AE%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%8F%E3%81%A7%E3%81%AE%E6%BC%94%E8%AA%AC

 

 オバマ大統領はこのプラハ演説で、ノーベル平和賞を受賞した。だが、「同盟」の指摘は、「広島訪問では、もはや演説だけでは不十分」と言っているのである。プラハ演説後、米国主導の核兵器縮小交渉は一向に進捗しておらず、むしろ北朝鮮などで核拡散が進行している。

 

 何よりも米国自身が、核戦力のバージョンアップを目指している。「核兵器を使用したことのある唯一の核保有国」としての道義的責任は、言葉だけで終わってしまうのか、そうではないだろう?というのが「同盟」の問いであり、人々に大統領に対して尋ねようではないか、と呼びかけているのだ。

 

 「行動」の要請文は「Go to Hiroshima, announce real steps to reduce nuclear threat(広島に行って、核兵器の脅威を削減する最初の本当のステップを宣言してもらいたい)」という内容だ。

https://secure3.convio.net/ucs/site/Advocacy;jsessionid=028B321E6CD75184CDB23FC92D24D432.app330a?pagename=homepage&page=UserAction&id=5232&autologin=true

 このモデル要請文は米国市民向けだが、日本人もホワイトハウスにメールや手紙で意思を伝えることはできる。大統領が来るのを待っているだけではなく、「来て、言って、行動してよ」と伝えるチャンスである。

 

https://www.whitehouse.gov/

https://www.whitehouse.gov/contact

 日本人は 米国市民ではない。しかし、米国によって「核兵器の攻撃を受けた唯一の被爆国、国民」である。われわれには、犠牲になった人々の無念を晴らし、次世代の人々の安心を確保するため、米大統領に尋ねる道義的責任がある。

 

 

 http://www.ucsusa.org/