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海洋を覆うマイクロプラスチック 生分解性プラスチックへの代用も「効果なし」。国連報告書が指摘(RIEF)

2016-05-24 21:35:01

microplasitcキャプチャ

 

  海洋のプラスチック汚染が問題化しており、環境に優しいとされる「生分解性プラスチック」への期待が高まる。だが、実は同プラスチックへの切り替えは、問題解決につながらないと、国連環境計画(UNEP)が警告している。

 

 海洋廃棄物問題は先週、富山市で開いたG7環境相会議でも主要議題として議論され、「海洋ごみ問題に対処するためのG7行動計画」を、今後、効率的に実施していく重要性を確認している。G7として海洋汚染防止のベスト・プラクティスを共有し、G7以外の途上国などとも共有することでも合意している。

 

 UNEPはこのほど「海洋プラスチック廃棄物とマイクロプラスチック」と題する報告書をとりまとめた。Dr Peter J Kershaw氏が主要執筆者となり、各国の海洋廃棄物等の専門家が参画して仕上げた。

 

 多様な用途に使われるプラスチックは、世界中で年間3億㌧(3億1100万㌧:2014年)生産されている。その3分の1は包装用で、材質を柔らかくしたり、色づけ、難燃性、UV耐性などを付加するため化学物質を添加する場合が多く、それらのうちには有害性のあるものもすくなくない。

 

 海洋に放棄されたプラスチック廃棄物は、紫外線や波によって細かく砕かれ、5mm以下の「マイクロプラスチック」となって世界中の海を覆っている。これらは有害物質のポリ塩化ビフェニール(PCB)などを吸着し、魚や貝類がプランクトンと間違えて摂取する結果、植物連鎖を通じて生態系や人体への悪影響が懸念されている。

 

 プラスチックゴミの海洋投棄を禁止するのが一番望ましい。ただ、万一、投棄されても、生分解性のプラスチックなら大丈夫との見方がある。しかし、報告書は、否定的な見方を示している。報告書作成にも関与したUNEPのチーフ科学者であるJacqueline McGlade氏は、「生分解性プラスチックは問題解決を目指したものだが、海洋の場合は『間違い』と言わざるを得ない」と指摘する。

 

 生分解性プラスチックはでんぷん、セルロースなどの生分解性材料で作成される。このため微生物などによって分解され、最終的には水と二酸化炭素になって環境に負荷を与えないとされる。しかし、と微生物による分解は一定の温度下でないと機能しないとされる。McGlade氏は「50℃の温度で初めて分解する。そうした環境は海洋にはない。さらに、分解には日照の影響が大きいが、生分解性プラスチックは浮揚性がなく、海洋に沈んでしまう」と述べている。

 

 国連の推計では、プラスチックの生産は今後も増加を続けると、2050年までには現在の7倍近い20億㌧に達するとみられている。このうち海洋に投棄されているプラスチック量がどれだけあるかは不明だが、現在、世界中のどの海でもプラスチック浮遊物がみられ、七つの海を覆っていることは間違いないようだ。

 

 報告書は、プラスチック廃棄物の海洋汚染問題を「人類の共通の関心事」と位置づけ、廃棄物を減少させるための3R政策の推進をグローバルに展開する循環型社会への転換を促進するよう求めている。

 

http://www.unep.org/about/sgb/Portals/50153/UNEA/Marine%20Plastic%20Debris%20and%20Microplastic%20Technical%20Report%20Advance%20Copy.pdf