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ナイジェリア : 汚染除去の第一歩として、シェル社は10億ドル支払うべき(Amnesty)

2011-11-15 14:56:04

ナイジャーデルタにおいて、原油流出による汚染を引き起こしたシェル社は、汚染除去を始めるために10億米ドルを支払うべきである。アムネスティ・インターナショナル、並びに環境・人権・開発センター(CEHRD)は11月10日、このように述べた。

両団体が同日に発表した新たな報告書「真の悲劇:ナイジャーデルタにおける汚染対処の遅れと怠慢」は、2008年にオゴニランドのボドで起こった、2つの大規模な汚染を取り上げている。同地では、流出した原油は一度も除去されることなく、現在も惨状が残る。

国連環境計画は、オゴニランドの汚染の度合いは深刻であり、同地域が再生するには25年以上かかるであろうと報告している。国連は、環境復元基金を立ち上げるべきだと勧告した。同基金には、立ち上げのための10億米ドルに加え、継続した資金調達が必要となる。

「ボド地域での原油流出を即時に防ぎ、汚染除去を行うことを怠ったシェル社は、何万もの人びとの生活を破壊しました。ボドでの悲劇は、起るべきではありませんでした。しかしながら、今日においてもシェル社の対応の怠慢は続いています。今こそ、数十億ドル規模の企業が、自らの過ちを認め、汚染を除去し、支払いをするべきです」と、アムネスティのナイジェリア調査員アスター・ヴァン・クレフテンは述べた。

2008年、パイプラインの故障によって2件の流出が起り、何千バレルもの原油が、およそ6万9000人が暮らすボド周辺の土地や入り江を汚染した。流出が止められるまでには数週間を要した。適切な汚染除去は、今日まで行われていない。

「ボドの状況は、ナイジャーデルタにおける石油産業の全体の状況を、端的に示しています。政府当局は、石油企業をまったく規制できていません。シェル社やその他の石油企業は、制裁を恐れることなく、自由に行動することが可能となっています。長くの懸案であった、独立した、強固で、潤沢な資金力を有する監督機関の設置がなされなければ、より多くの人びとが、石油企業のせいでこれからも苦しみ続けることでしょう」と、環境・人権・開発センターのコーディネーターであるパトリック・ナーグバントンは述べた。

伝えられるところによると、シェル社は7~9月の間に72億ドルの利益を上げているが、事故当初に彼らがボド地域に対し提供したのは、救護物資としての、わずか50袋の米と砂糖、トマトだけであった。

現在も続く漁業や農業への打撃は、ボドにおいて食糧の不足と値上がりをもたらしている。同地の住民はアムネスティと環境・人権・開発センターに対し、自活の困難さと深刻な健康上の懸念を訴えた。住民が代わりの仕事を見つけるのは容易ではなく、多くの若者が、同地から50キロ離れた首都のポート・ハーコートで働くことを余儀なくされている。

ボドの漁師は、次のように述べている。「汚染される前、私たちの生活は楽でした。私たちは魚をとって、生きていくことができました。しかし原油が流出し、すべてが破壊されたのです」

アムネスティがシェル社に対し、ボドでの汚染除去の失敗に関してコメントを求めたところ、「ボドでの原油流失は、英国での法的続きの途中であり、直接返答できない」という回答を得た。

シェル社は、ボドの問題への取り組みが、同地で続くサボタージュによって妨害されていると述べている。しかしこの点については、アムネスティ並びに環境・人権・開発センターは、強く異を唱えている。

「シェル社はしばしば、原油の流出はサボタージュが原因で起っていると説明しています」と、アスター・ヴァン・クレフテンは述べた。

「しかし、原油流出に関するデータ収集の工程に不備があると訴えるコミュニティや複数のNGOは、この主張に対して強く反論しています。シェル社が、自社による汚染を認めたボドにおいてさえも、同社はナイジェリアの法規制に基づく対応、すなわち、汚染除去と補償金の支払いができなかったことを、サボタージュのせいにしているのです。この見解は、到底受け入れられるものではありません」

「事実はとても単純です」と、パトリック・ナーグバントンは付け加えた。「2つの流失は、いずれも同社に責任があります。いずれも流出が止められるまで数週間を要し、そして3年以上経っても汚染が除去されていません。言い逃れはできません。どのような基準をもっても、これは企業の過ちなのです」

報告書の中では、ナイジェリア政府機関もまた、適切に取り締まることができなかったとして、強く非難されている。石油企業に規制を守らせる責務がある連邦石油資源省は、石油企業の利益の最大化に寄与したという嫌疑をもたれている。

ナイジェリアの政府機関である原油流出探知対策庁(NOSDRA)は、原油流出に対して責任を負う。しかしながら、同機関は資金力に乏しく、あまりにも無力である。同機関は、原油の流出を確認するための独立した権限がなく、責任を負うべき石油企業や、影響を受けた地域に依存している。

国連環境計画は、石油汚染に関する最近の報告書の中で、「政府機関は、調査実施の際に石油企業の言いなりになっている」と指摘した。 原油流出探知対策庁は、ボドにおける汚染の事例において、適切な規制を敷くことに幾度となく失敗している。

◆背景情報◆

2008年8月、トランス・ナイジャー・パイプラインの不具合により、ボド地域にて大規模な原油流出が起こった。その後少なくとも4週間、おそらく10週間にわたって、原油が湿地帯に流れこみ続けた。

シェル社は1640バレルの流出を報告しているが、独立した調査によれば、1日あたり4000バレルの流出があったという。流出は、2008年の11月にようやく止められた。

2008年12月7日、ボドで2度目の原油流出があった。このたびも設備の故障が原因だった。この流出は、シェル社によって12月9日に発表されたが、流出が止まるまでに10週間を要した。

ボドの住民たち、何年にもわたりシェル社による汚染除去と適切な補償を求めた末、2011年の初めにイギリスで訴訟を起こした。訴訟は現在も継続中だが、ボドでの状況が解決に向かうのではないかという兆しを見せている。

国連開発計画によると、この地域に暮らす60パーセントの人びとが、自然環境に依存しながら生活している。

国連開発計画によれば、1976年から2001年の間に、6800件以上の原油の流出が報告された。流出量の合計は、300万バレルに匹敵する。多くの専門家は、明るみに出ないものの、実際の流出量はもっと多いであろうと推察している。


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