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「混獲を減らす漁具」のコンテストで日本人が大賞を受賞(WWF)「スマート・ギア」といいます

2011-11-18 12:44:04

大賞を受賞した第5福積丸の山崎漁労長
漁業における「混獲」を減らすための漁具のアイデアを競う、国際スマートギアコンテスト2011が開催され、今回初めて、日本人が大賞を受賞しました。受賞したのは、日本かつお・まぐろ漁業協同組合所属の第5福積丸の山崎漁労長で、アホウドリやミズナギドリなどの海鳥の混獲を防ぐ工夫を凝らした、「二十加重枝縄」のアイデアがその賞を獲得しました。混獲は海の環境を脅かす深刻な問題の一つで、毎年数十万ともいわれる海鳥やウミガメなどの海洋生物が犠牲になっているとされています。

大賞を受賞した第5福積丸の山崎漁労長


「SeaQualizer」魚の取り外しを容易にする工夫がなされている





混獲を減らす、革新的で環境にやさしい技術を競う


「混獲」は漁業において、本来漁獲する必要のない、目的外の生物を誤って漁獲することです。

混獲されているのは、海鳥やウミガメ、アシカなどの海獣類、また目的ではないさまざまな魚類など。獲られた生きものは利用されずに多くが廃棄されますが、こうした混獲による漁獲量は、世界の全漁獲量の40%に達し、毎年、数十万もの海洋生物の命が失われているといわれています。

2年に1度開催される国際スマートギアコンテストは、こうした混獲による被害を減らすための解決策となる漁具「スマートギア」のアイデアを募るもので、WWFと多くの賛同団体により2004年5月から開始されました。

そして、2011年のコンテストでは、初めて、日本からのアイデアが大賞を受賞しました。

受賞したのは、日本かつお・まぐろ漁業協同組合所属の第5福積丸の山崎漁労長で、賞金3万USドル(約230万円)を獲得。さらに、インターナショナル・シーフード・サステナビリティ財団(ISSF)のマグロ部門特別賞(賞金7,500USドル(約58万円))も受賞しました。

水産大国・日本の技術力の高さを証明


大賞を受賞した、山崎漁労長の考案による「二十加重枝縄」は、マグロの延縄漁に際して、アホウドリやミズナギドリなどの海鳥の混獲を防ぐ工夫を施したものです。

こうした海鳥は、マグロの餌として釣り針に付けられた魚を狙い、海に飛び込んでこれに食らい付きますが、同時に針を飲み込んで、水から上がれなくなり、命を落とす混獲がしばしば起きます。

「二十加重枝縄」は、これを回避するため、海鳥が潜るよりも早い速度で釣り針が水に沈むよう、錘を2つに分ける工夫を凝らし、さらに、錘と釣り針を素早く巻き取ることで、船員の怪我や事故のリスクも低減する仕組みになっています。

実はこれまでにも、延縄漁における混獲を防ぐ対策の一つとして、加重枝縄という、より針を速く深く沈めることで、水鳥の混獲を防ぐ対策が提言されてきました。

しかし、以前の加重枝縄では、マグロが釣り針から不意に外れた際、その反動で枝縄が甲板に跳ね返り、船員が大けがを負うことがあったことから、普及が進んでいなかったという背景があります。

今回のアイデアは、そのリスクを減少させ、対策実施の障害の一つを取り除いたことが、大きなポイントの一つになっています。

2010年に、このアイデアを導入した9万5000以上の枝縄(針のついた縄)が使われましたが、結果、通常の場合と比べ海鳥の混獲を89%低減させることに成功。漁獲率を下げることもなく、事故も一度も起こしませんでした。

このアイデアは、南アフリカ政府とワシントン大学のエド・メルビン博士が、2008~2010年までの3年間に実施した海鳥混獲回避調査に、日本かつお・まぐろ漁業協同組合が協力する中で誕生しました。

また、今回のコンテストについては、積極的に取り組んでいる混獲の取り組みを、より多くの方に理解していただくためにも、応募に踏み切ったとのことです。

WWFジャパンでは、今回の受賞が、水産大国である日本の技術力の高さが、生産性だけではなく、海洋の生物多様性の保全や、持続可能な漁業の普及にも貢献し、この分野で世界を牽引していけることを証明するものとして、高く評価しています。

日本かつお・まぐろ漁業協同組合では、今後も海鳥の混獲を回避するために、他の漁具についても開発と工夫の努力を続けてゆきたいとしています。

海の自然を守るさまざまなアイデア


2011年のコンテストでは、この他にも、2組のアイデアが準優勝し、それぞれ1万USドルを獲得しました。

1組目は、フロリダの団体が発明した「SeaQualizer」と名付けられた装置で、釣り上げた魚を再放流する際の死亡率を低減する手法です。

これは、とりわけキンメダイ(Red Snapper)やメバル(Rockfish)の、資源管理を大きく改善する技術として、期待されています。

もう1組は、サンディエゴのOcean Discovery Instituteとハワイ大学のチームによる「Turtle Lights for Gillnets(刺し網用ウミガメ灯)」。
これは刺し網によるウミガメの混獲を減らすため、LEDを使ったライトで網の存在を認知させる装置です。

実験では、漁獲率や漁獲量を下げることなく、アオウミガメの接触を60%まで低減させました。

このコンテストについて、WWFアメリカの漁業プログラムのビル・フォックスは次のように言います。

「こうしたスマートギアは、漁業者がより持続可能な漁業を行えるよう革新的な装置を生み出すための、環境保全団体と漁業者と科学者とのユニークな協同作業の賜物です。スマートギアコンテストの受賞者が考案した創造的なアイデアは、海洋環境を脅かす混獲の問題を、実践的かつ効率的に解決してみせる、確かな手段を提示しているのです」。

コンテストの授賞式は、2011年11月18日に、アメリカのワシントン州シアトルで開催されます。




大賞を受賞した第5福積丸の山崎漁労長

「二十加重枝縄」を使用した操業

「SeaQualizer」魚の取り外しを容易にする工夫がなされている

「刺し網用ウミガメ灯」光でウミガメの接近を防ぐ



記者発表資料



関連情報



2011年のスマートギアコンテスト受賞内容(英文:PDF)



関連サイト



 

http://www.wwf.or.jp/activities/2011/11/1027218.html