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地球温暖化で、海氷が急速に溶融して「公海」化する北極圏での国際的な漁業規制ルール作りを、米ロ加など10か国が議論。日本も参加(RIEF)

2016-07-12 01:39:17

arctic3キャプチャ

 

 地球温暖化の進展で、北極圏を覆う海氷の溶融が急速に進む中で、公海となる北極圏での漁業活動が無秩序に展開されないように、国際規制をかけるべきだとの議論が高まってきた。

 

 カナダ北部のバフィン島のイカルイトで、このほど日本を含む北極海関係10か国・機関による国際会議が開かれた。国際法上、沿岸から200カイリ以上離れた公海での漁業は、だれもが自由に行える。北極は氷に覆われているが、基本は海なので、氷が溶けて航路ができると、公海自由の原則が適用される。

 

 これまで北極圏域は夏場も海氷に覆われていることが多かったことから、漁場とみなされてこなかった。だが、温暖化の進展で氷の溶融が急速に進んでおり、夏場を中心に、かなりの期間にわたって漁業が可能な海域が広がってきた。

 

 このため昨年7月には北極沿岸5カ国(米、カナダ、ロシア、デンマーク、ノルウェー)がノルウェーのオスロで会議を行い、国際漁業規制の必要性を宣言した。今回の会議は参加国を拡大して具体的な国際規制の在り方を議論するために開いた。追加参加したのは、日本のほか、欧州連合(EU)、中国、韓国、アイスランドの4か国+1機関。

 

 会議には、北極海沿岸で漁業や狩猟などで生活する先住民、イヌイットの代表として、カナダ・イヌイット極地評議会のメンバーも参加した。イヌイットは北極圏で生活しており、彼らの権利擁護も焦点の一つだ。

 

 米加はこうした国際交渉を先取りする形で、この春、オバマ米大統領と、カナダのトリュドー首相が共同で米加リーダーシップモデルを結んでいる。その目的は北極圏の先住民保護と環境保護を目指す、としているが、漁業資源の扱いや石油・ガス開発のルール化などにも言及している。

 

 米加合意の主な内容は次の通り。

 

▼沿岸陸地分の少なくとも17%、海域部の10%を2020年までに保全対象とする。

▼北極全域の海洋保護ネットワークの創設。

▼現地の知恵と伝統の知識を政策決定に統合する。

▼環境影響の少ない航路の建設。

▼中央北極海域での海洋生物資源の保全と科学調査の促進のため、無規制漁業を制御する国際規制協定の締結。

▼石油・ガスを採掘する場合は、十分にコントルールされ、緊急対策も含め、北極の条件に適合した適切な準備が確保された米加両国の科学的基準に基づいて調整されねばならない。

 

 今回の10カ国会議では、こうしたルール化の議論の中でも特に、漁業資源の乱獲を防ぐ国際的なルールづくりでの調整を早急に進めることで一致した。また、漁業資源についての国際的な研究調査体制の構築についても議論を進めた。

 

 カナダのNGOのOceans Northの漁業政策担当のTrevor Taylor氏は、「国際的な拘束力を備えた規制にするか、自主規制にするかが最大の論点。われわれは、対象範囲を十分に広くカバーし、拘束力の強い条約の締結を求めている」と指摘している。

 

 北極圏で有望な漁場とみなされるのは、米国とカナダの間に広がるボーフォート海からチュクチ海台一帯。浅瀬が続くことから、漁業に最適な環境だという。しかしこれらの地域はイヌイットの生活漁業の場でもある。

 

http://www.cbc.ca/news/canada/north/canada-pushing-for-finding-agreement-on-arctic-fishing-1.3671168