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温暖化で豪華客船による初の「北極クルーズ」現実に。現在、32日間のクルージングの真っ最中。料金は最高一人1200万円(RIEF)

2016-08-24 18:50:16

Serenity1キャプチャ

 

    歴史上初となる豪華客船による「北極クルーズ」が現在、航行中だ。この夏の北極は、地球温暖化の影響で海氷が観測史上最小化しており、「地球上、最後の秘境」のクルーズを可能にした。クルーズ船は昨年まで日本郵船が所有していた企業の客船だ。

 

 歴史的なクルーズを敢行したのは、米ロサンゼルスを拠点とするクルーズ会社のクリスタル・クルーズ社。保有する豪華客船、Crystal Serenity(クリスタル・セレニティ)号を船出させた。同船は全長250m、68,870㌧、548の客室を持ち、1070人の乗客が搭乗できる。

 

 クルーズ社は日本郵船が1988年に100%子会社として設立、Serenity号とCristal Symphony号の2隻を運航してきた。しかし、郵船はもう一つのクルーズ事業の「飛鳥クルーズ」に専念する形で、昨年3月、クルーズ社をアジア・太平洋でクルーズ事業を展開する「ゲンティン香港」に売却した。ただ、クルーズ社の販売代理店は続けている。

 

 今回の「歴史上初の北極クルーズ」の航路は、アラスカの太平洋側のアンカレッジのスワードを16日に出発、ベーリング海を通って、北極圏海域に入る。北極のチュクチ海、ボーフォート海をクルージングし、カナダ最北のウルカトックに寄港。その後、最北の島々やフィヨルドを巡って、グリーンランドに上陸する。さらに大西洋に戻って南下、ニューヨークに到着するという延べ32日間のコースだ。

 

 serenity3キャプチャ

 

 セレニティ号は、日本にも何度も寄港したことのある豪華クルーズ船で、船上には、ゴルフ練習場、カジノ、映画館、6か所のレストラン、複数のプールや図書館、スパ、フィットネスセンターなど多様な娯楽施設が完備している。

 

 32日間コースの一人当たり料金は、最低が2万2000㌦(220万円)で、最高は12万㌦(1200万円)という。ゆったり気分で、北極の海を旅し、ホッキョクグマやアザラシを眺め、後半のグリーンランドでは、氷河を楽しむといった感じだ。

 

 クルージングはほぼ満員で出発したという。温暖化のプラス面の恩恵による、なんとも贅沢な旅だが、いくつかの論点を浮上させている。一つは、万一、北極海上で乗客が病気などになった場合、船内に待機している医師の手に負えないとどうするのか、といった緊急対応の問題。

 

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    もう一つは、クルーズ船から油や廃棄物等が航海中に放出されると、自然浄化力の弱い北極圏の生態系に影響を及ぼすのではないか、という環境面の懸念。さらに、いくら北極海で海氷が融けて大型船が通れる海域が広がったとはいえ、氷山等にぶつかるリスクもある。タイタニックだ。万一の事故の場合も、北極なので、救助が容易ではないほか、船舶等からの汚染問題が生じる。

 

 WWF英国のプログラムマネジャーの Rod Downie氏は、「大規模クルーズで多くの人々が詰め掛けることで、すでに温暖化の進行と海氷の喪失でストレスを高めている生態系がさらに影響を受けるリスクが高まる」と警告している。

 

 北極海の経済・社会的利用と保全の問題は、北極沿岸国で構成する北極評議会(Arctic Council:AC)で議論されている。ACは米、カナダ、ロシア、フィンランドなど8カ国が加盟国。このほか、北極圏諸国に居住する先住民団体、オブザーバー国として非北極圏国の日本や英、仏、独、中国、インド、韓国など12カ国が参加している。

 

http://www.crystalcruises-japan.com/?page_id=121