オバマ米大統領 ハワイの海洋保護区を一気に拡大、日本国土の約4倍に。ミッドウェー諸島も対象。区域内の商業漁業を禁止。絶滅保護種の海洋生物を保全へ(National Geographic)
2016-08-31 23:54:11
米国立公園局が創立100周年を迎えた8月末、バラク・オバマ大統領は、世界最大の海洋保護区の設立を発表した。太平洋に位置するおよそ151万平方キロのこの海域は、海洋生物の宝庫であり、ハワイの土着文化においても重要な役割を果たしている。(参考記事:「世界初の国立公園イエローストーン」)
「パパハナウモクアケア海洋国立モニュメント」は、2006年にジョージ・W・ブッシュ大統領によって設立された保護区であり、今回の発表以前から、オバマ大統領の出身地であるハワイの北西に浮かぶ無人の島々の周囲36万平方キロをカバーしていた。(参考記事:「ブッシュからオバマへ 知られざる米大統領の日常」)
オバマ大統領は同保護区をこれまでの4倍以上に拡大した。151万平方キロという規模は、米国の国立公園をすべて合わせた面積を超える広さだ。大統領は遺跡保存法に基づく行政権限を行使して、保護区の境界の大部分を排他的経済水域の限界線である200海里まで広げるとともに、同区域内での商業的漁業を禁止した。(参考記事:「南米チリ、巨大な海洋保護区を新設」)
海洋保護区を大幅に拡大
オバマ大統領は遺跡保存法に基づき、パパハナウモクアケア海洋国立モニュメントをおよそ115万平方キロ拡大した。これにともないハワイ諸島北西部周辺は漁業禁止区域となった。
ハワイ州のデービッド・イゲ知事は、地元では保護区と漁業の禁止措置について「激しい」議論が闘わされたと述べている。しかし最終的には、拡大された保護区は「現在のハワイ諸島周辺の海に適度なバランスをもたらし、世界の海が目指すべき持続可能なモデルとなることができる」との結論に達したという。(参考記事:「日本の国土より広い海洋保護区を可決、パラオ」)
パパハナウモクアケア保護区には、シロナガスクジラ、アホウドリ、ウミガメの他、今では同海域でしか見られないハワイモンクアザラシなど、絶滅の危機に瀕する動物たちが暮らしている。保護区には、世界の北限に位置し、状態も非常に良好なサンゴ礁がいくつかあり、気候変動によって水温が上昇した海でも生き残れる可能性が高いとみられている。
深海の海底山脈や海山は、7000種以上の生物のすみかとなっており、中には世界最高齢の動物とも言われる、4000歳を超えるツノサンゴの仲間もいる。(参考記事:「ハワイの海を守る不思議な生き物」、「大洋のオアシス 海山を探る」)
保護区内に生息する生物全体の4分の1は、この海域の外では見られない種だ。まだ見つかっていない生物も数多く存在する。たとえば最近では小型の白いタコが発見され、学者たちはこれをテレビアニメに登場するおばけのキャラクターにちなんで通称「キャスパー」と呼んでいる。(参考記事:「【動画】深海で幽霊のようなタコを発見、新種か」)
ナショナル ジオグラフィック協会付きエクスプローラーである海洋生物学者のシルビア・アール氏は、今回のオバマ大統領の決定により、米国がこの先、海洋の保護と環境回復に十分貢献できるだけの広さをもつ保護区の世界的なネットワークづくりを主導していけるのではないかと期待を寄せている。
アール氏は海洋保護区を「ブルーパーク(青い公園)」と呼び、そうした場所を訪れるのは「贅沢なことではありません。気軽に楽しめばいいのです」と語る。「気候変動に対抗する回復力を持てるか否かは、大規模な自然保護区を確保し、生物多様性や、地球を安定させているさまざまな要素を守れるかどうかにかかっています。これは我々の生命を維持しているシステムを保護する上で、きわめて重要なことです」(参考記事:シルビア・アール「ワールド・イズ・ブルー 母なる海に迫る危機」)
ハワイでは9月、各国代表が地球の保護について話し合う「世界自然保護会議」が開かれる予定だ。