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南極海で 「マイクロプラスチック」初めて検出。プラスチックごみの海洋汚染、グローバル課題に。効果的な規制と監視が難問(各紙)

2016-09-26 21:56:56

nakyoku2キャプチャ

 各紙の報道によると、世界の海洋に漂う微細なプラスチックのごみ、「マイクロプラスチック」が、人間の生活圏から最も遠い南極海で見つかった。地球規模での海洋汚染の広がりを示すもので、早急な対策が問われている。

 九州大や東京海洋大などの日本の研究チームの調査で判明した。マイクロプラスチックは海洋に廃棄されたプラスチックのごみが、紫外線や波の力で大きさが5mm以下に細かく砕けたもの。分解されずに海を漂い、有害物質を付着しやすく、海の生態系への悪影響が指摘されている。

 マイクロプラスチックのうちでも1mm以下のマイクロビーズは、稚魚などがプランクトンと間違って摂取する事例が報告されている。体内に濃縮されて蓄積、成長したその魚を別の魚などが捕食して、食物連鎖に影響を与えている可能性が指摘されている。http://rief-jp.org/ct12/61874

 九州大、東京海洋大のチームは、今年1月、海洋大の練習船で南極海を調査、海域の2か所から海水を採取し、マイクロプラスチックの存在を調査した。その結果、調査した2か所の海水からプラスチックが検出された。さらに、その密度は、これまでに調査が行われた世界各地の海の平均の2~4倍の高濃度だった。

 
 南極海でマイクロプラスチックが検出されたのは、今回が初めて。調査を行った磯辺篤彦九州大教授は、「汚染が地球全体に広がっていることを示すもので各国が協力して実態の把握を進めるとともに、対策を急ぐ必要がある」と指摘している

 多様な用途に使われるプラスチックは、世界中で年間3億㌧(3億1100万㌧:2014年)生産されている。その3分の1は包装用で、材質を柔らかくしたり、色づけ、難燃性、UV耐性などを付加するため化学物質を添加する場合が多く、それらのうちには有害性のあるものもすくなくない。

 

 海洋で微細なマイクロプラスチックになると、上述したように稚魚などを介して食物連鎖に影響を与えるほか、有害物質のポリ塩化ビフェニール(PCB)などを吸着して人体へ悪影響となる懸念がある。マイクロプラスチックに付着した有害物質は、海水に溶けている有害物質と比べ、10万倍から100万倍も濃縮され、マイクロプラスチックを体内に取り込んだ海鳥の体の脂肪の有害物質濃度も高くなることが指摘されている。

 

 

 こうした問題を引き起こしているプラスチックだが、その生産は今後も拡大し、2050年までには現在の7倍近い20億㌧に達するとみられる。効果的な対策が打ち出されない限り、その分、廃棄プラスチックも増大することになる。

 

 対策は、プラスチックゴミの海洋投棄を禁止するのが一番望ましい。だが、たとえば化粧品等に使われるマイクロビーズの場合、米国のコロラド州などの8つの州が2017年から禁止する法律を制定しているが、欧州や日本では規制されていない。

 

 

 国連環境計画(UNEP)は国際的な規制に向けた取り組みを進めているが、http://rief-jp.org/ct12/61442 温暖化問題と同様に、すでにこれまで大量のプラスチックを廃棄してきた先進国などの責任と、途上国の責任負担をどう扱うか、あるいは実効性の規制と監視の体制をグローバルに構築できるのか、といった難問に直面している。