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豊洲市場、連絡通路下から環境基準を710倍上回るベンゼン検出。東京都は「場外だから問題ない」と説明。環境基準って何?(各紙)

2016-10-05 09:00:35

toyosu8キャプチャ

 

 各紙の報道によると、東京都の築地市場(中央区)から移転予定の豊洲市場(江東区)の水産仲卸売場棟と水産卸売場棟を結ぶ連絡通路の地下に、環境基準を710倍上回るベンゼンが検出されたことが分かった。

 

 朝日新聞が報じた。都の計測によると、同地の地中からベンゼンは最大で環境基準(1㍑当たり0.01mg)の710倍の高濃度が検出された。またシアン化合物は検出下限(同0.1mg)の700倍の値だった(環境基準は不検出)。

 

 連絡通路は「道路用地」と位置付けられ、市場用地と同様の大規模な除去はされていないという。都は「汚染を封じ込める対策をとったので安全性に問題ない」としているが、環境基準を上回る汚染になっていることは、都のホームページなどでも情報開示されておらず、検証を求める声もある。

 

 連絡通路は、市場の中央を東西に通る都市計画道路の高架橋下にあり、卸・仲卸業者ら市場利用者が徒歩やターレ(運搬車)で行き来する予定。

 

 都は、市場用地では見つかった汚染物質を除去してきたとしているが、今回の場所は「市場用地」の外と位置づけており、土壌汚染対策を話し合う専門家会議や、その後に作られた技術会議でも、見つかった汚染物質をすべて除去する対象としていこなかったという。

 

 都が市場の業界団体や有識者らを集めて土壌汚染対策を説明する協議会では、2013年5月、参加した委員から「この場所は市場内と考えるべきでは」との指摘が出たが、都は「市場用地とは全然異なる」「汚染土壌は除去していないが、きちんと道路管理をしているので大丈夫」などと回答していた。

 

 また都は、同年2月に高架下の土壌汚染対策工事を発注していた。この間の経緯は不明だが、同年10月の同協議会では「市場と一体的な場所」と認め、汚染土壌を「可能な限り除去する」と説明を変えた。

 

  工事対象は高架橋下の約1万㎡。環境基準を超える土壌汚染が広範囲で確認されたが、すでに同地には地中にガス管を敷設、高架橋の橋脚や橋桁もできていたため、汚染物質の除去は14地点で対象範囲の1割ほどの広さに限り、掘削した深さも汚染のある地盤面の1m下までにとどまった。

 

 都も、汚染土壌の除去が十分でないことと判断したためか、汚染物質が地上に出てこないよう、遮断性の高い土や砕石の層を盛り、全面舗装したという。工事は14年に終えたが、この間の経緯や、同地の汚染状況、除去工事の詳細な情報については、これまで都議会でも公表していない。

 

 今回の高濃度汚染物質の検出について、都中央卸売市場は「掘削範囲が限られ、高濃度の汚染土が残っているのは事実。だが汚染土壌を封じ込めるため、土壌汚染対策法を上回る対応をした。安全性に問題はない」と説明している。

 

 しかし、豊洲市場の技術会議の委員で、都環境科学研究所の長谷川猛・元所長は「汚染土壌が都の説明通りに封じ込められているのなら安全上問題はないだろう。ただ道路用地に市場と一体の連絡通路をつくるという説明はなく、その前提で対策を議論していないので、驚いた。盛り土をしなかった問題と同じで、都民に実態をきちんと説明し、専門家会議などで安全性の検証を受けるべきだ」と話している。