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横浜に本部のある「国際際熱帯木材機関(ITTO)」 幹部による不正海外投資で1800万㌦の損失発覚。ズサンな国際機関運営を露呈(各紙)

2016-11-14 13:13:56

ITTOキャプチャ

 

 各紙の報道によると、熱帯林の保全や持続的な利用を促す国際機関の「国際際熱帯木材機関(ITTO=本部・横浜市)の元幹部らが理事会に諮らずに海外ファンドに投資を行い、1800万㌦(約18億9000万円)を、ほぼ回収できない状態になっていることがわかった。

 

 不正に使われた資金は、熱帯林保全などのプロジェクトに使われるため加盟各国が拠出した資金。このうち6割超の1143万㌦は日本の拠出分だった。

 

 不正投資を行なったのは、エマニエル・ゼ・メカ前事務局長(カメルーン出身)ら幹部3人。2012年から15年にかけて、オーストラリアやケイマン諸島にあるファンドに1200万㌦を投資した。本来、こうした投資は事前に理事会などに諮る必要があるが、そうした手続きは一切とらないで行なわれたという。

 

 その後、投資先の二つのファンド(LM Fund、Ardent)は清算もしくは清算手続き中で回収はほぼ不可能という。投資資金はもともと、日本のほか、米国、スイスなどからの拠出金で、実際のプロジェクトに対して支払われるまでの間、資産運用のために投資されるという。投資した幹部らは「少しでもプロジェクトの資金を増やしたかった」と説明したという。

 

 今回の不祥事による損失で、影響を受けるプロジェクトは230を超える。そのうち180弱は、事業は完了したが支払いが終わっていない。約60は継続中で、現在一時的に事業を中断している。

 

 ゼ・メカ前事務局長は、投資失敗についての情報が理事会に知られる前の2015 年11 月に退職、他の2名の幹部職員は解雇された。その後、事務局長の席は空席となっていたが、12日まで横浜で開いていた理事会で、ドイツ人のゲルハルト・ディーター氏を次期事務局長に選んだ。

 

 損失処理については内部留保などを使って、プロジェクトへの影響を抑えることになる見通し。ただ、今回の不祥事について、機関としての公式なコメントは表明されていない。

 

 ITTOは、熱帯林の保全と熱帯木材の持続可能な取引等々を扱う国際機関として1986年に設立され、現在、加盟国は73。設立当時は、熱帯雨林の伐採反対運動が世界的に問題になっており、そのなかでも日本は世界一の熱帯木材輸入国として攻撃の矢面に立っていた。そこで、ITTOの本部を日本に誘致して国際世論に配慮した形だった。資金面でも、日本が最大の支援国のため、損失額も最大となった。

 

 (写真は横浜で開かれたITTO理事会の模様)

http://www.itto.int/ja/