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海洋廃棄物汚染で、800種以上の動物種が被害。廃棄物の4分の3はプラスチック。生態系への影響深刻化。生物多様性条約締約国会議(COP13)で、国連の技術レポート公表(RIEF)

2016-12-07 22:40:04

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  地球上を覆う海洋での廃棄物汚染によって、800種類以上の動物種がマイナスの影響を受けるとともに、多くの国で経済的損失を引き起こしていることを示す最新レポートが、メキシコのカンクンで始まった生物多様性第13回締約国会議(COP13)で公表された。

 

 「海洋廃棄物:海洋と沿岸の生態系への重要な不都合な影響についての理解、予防、そして影響緩和」と題した生物多様性条約(CBO)のテクニカル・レポート83。

 

 それによると、2012年以来、海洋廃棄物の影響を受ける動物種は663から817に増加した。 そうした廃棄物の多くはプラスチックごみで、動物種だけでなく、人間の健康や福祉への影響も増大しているばかりか、毎年、数十億㌦の回収・清掃コストがかかっている。

 

 CBOの事務局長のBraulio Ferreira de Souza Dias氏は、「報告書は、海洋廃棄物が海洋のエコシステムの大きな脅威の一つであり、海洋の健全で豊かな海洋を守ることは、持続可能な発展を達成するための重要な課題であることを指摘している。各国政府をはじめとするステークホルダーに対しても、事態を改善するための緊急行動の情報を提供している」と指摘している。

 

 レポートはメキシコのカンクンで始まった生物多様性条約第13回締約会議(COP13)に関連して公表された。COP13は、今月4日から17日にかけて、生物多様性を保全するための適切な政策を、農業、林業、漁業、ツーリズムなどの産業にどう統合するかを議論する。

 

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  それによると、海洋廃棄物の約4分の3はプラスチックごみで、生分解されないことから、その影響が継続し、また海洋を漂う中で波等によって細分化され、マイクロプラスチックとして海洋生物等の生態系に取り込まれている。その結果、海洋生態系を汚染するほか、人間の健康にも潜在的に影響を及ぼしている可能性があるとされる。

 

 海洋廃棄物の一般的なタイプは、食料品の包装材、飲料ボトルやそのキャップ、ストロー、プラスチック・バック、たばこの吸い殻など。たばこを除く大半がプラスチック製品だ。

 

 レポートによると、クジラやイルカなどの海洋哺乳類の40%、カモメやなどの海鳥の44%は海洋廃棄物を誤って食べているという。その多くは直径5mm以内のマイクロプラスチックの粒や破片となっている。

 

 プラスチックは、世界の石油生産の8%を占めている。問題なのは、使用後に廃棄された後、分解が非常に困難である点だ。プラスチックの生産量は1950年代に世界全体で年間150万㌧だったのが、2012年には2億8800万㌧と約190倍に増大している。 このうち、 1.8%~4.6%にあたる480万㌧から1270万㌧が毎年海洋に投棄されているとみられる。

 

 海洋廃棄物の3分の2は、東アジア、欧州、北米で発生しているという。こうした廃棄物は漁業や船舶の公開、観光産業などに負の影響を与えており、その損害額は年130億㌦に上るとの試算も示している。

 

 損害は船舶が廃棄物によって損傷したり、回収の費用増、砂浜汚染で海水浴客が減少するなどの観光収入の収入減などの経済的損失のほかに、廃棄物で人がケガをしたり、船舶の航行が阻害されるなどの問題も多発している。

 

 レポートは、こうした海洋廃棄物を減少させるため、プラスチックバッグ等の使用の抑制、有料化、禁止措置などのほか、生分解性の高い新たな材料の開発などをとるよう、各国政府や消費者などに勧告している。

 

 加えて、各国政府には、 海洋汚染問題や廃棄物リサイクル、リユース等に対する国民、市民の関心を高める啓蒙活動を広げることも求めている。

http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=55724#.WEgBBmf_o5t