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日本沿岸の海洋の酸性化の進行。東京湾などでは外洋の10倍ペース。温暖化の影響に加えて、日本特有の汚染物質流入の影響か(各紙)

2017-01-17 17:58:35

Ocean2キャプチャ

 

 各紙の報道によると、日本沿岸部で海水のアルカリ性が弱くなる「海洋酸性化」が急速に進んでいることがわかった。外洋の10倍以上のペースで進行している海域もある。地球温暖化による大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の上昇に加え、陸から流入する汚染物質が影響している日本特有の原因がある可能性がある。

 

 調査は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)などが笹川平和財団海洋政策研究所の委託で実施した。環境省の全国沿岸海域のモニタリングデータを解析した。日本沿岸域の酸性化の詳細な特徴が解明されたのは今回が初めて。19、20日に東京都内で開くシンポジウムで発表される。

 

 海洋は本来、大気中のCO2を吸収する緩和的な役割を果たしている。しかし酸性化が進行すると、海洋中の炭素系の化学的な性質が変化し、CO2吸収能力が低下することが知られている。そうなると、大気中に残るCO2量の割合が増え、温暖化がさらに進む懸念がある。

 

oceanキャプチャ

 

 また酸性化が進むと、海洋に生息する貝や甲殻類、動物プランクトンなどの炭酸カルシウムの殻をつくる生物の生息に悪影響を与える可能性も指摘されている。サンゴなどへの影響も大きい。今回の調査結果は、そうした温暖化の影響に加えて、日本の海域特有の追加汚染の可能性も示唆している。このため、海洋問題の専門家は、今回の調査を踏まえて、詳しいメカニズムや生態系への影響を調べる必要があると指摘している。

 

 研究チームは、1987年から2009年の間に、酸性度を示す水素イオン指数(pH)がどう変わったかを調べた。それによると、約2100カ所の観測点のうちアルカリ性が強まっていたのは87カ所だけ。一方、332カ所では酸性化が進んでいたことがわかった。

 

 また水素イオン指数の年間変化を調べると、酸性化が進まなかった場合は数値の変化がゼロなのに対し、全国平均の指数は0.0015減少し、外洋と同程度の酸性化が起きていた。

 

 工業港などがある宮城県石巻市や北海道苫小牧市、東京都の東京湾など13カ所の観測点では0.01超の減少がみられ、酸性化のペースが平均をはるかに上回っていた。山口、愛媛、鹿児島、沖縄各県の観測点も酸性化の度合いが高かった。

 

 海洋酸性化は大気中のCO2が海水に溶け込む量が増えて起きるが、汚染物質による酸性化のメカニズムには未解明な点が多い。

http://www.jamstec.go.jp/j/