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北海道アスベスト訴訟 国の責任認定、しかしメーカーの責任は認めず。国に9億6250万円の賠償命令。全国集団訴訟の最後。決着は控訴審以降へ(各紙)

2017-02-14 23:01:41

asbest1キャプチャ

 

 各紙の報道によると、建設現場でアスベスト(石綿)を吸い、肺がんや中皮腫を発症したとして、北海道内の元労働者や遺族ら計33人が、国とクボタなど建材メーカー41社に計9億6250万円の損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁(内野俊夫裁判長)は14日、国に計約1億7600万円の賠償を命じる判決を出した。ただ、メーカーの責任は認定しなかった。

 

 内野裁判長は判決理由で「国が防じんマスクの使用を義務付ける措置を講じなかったのは違法」と指摘した。アスベスト訴訟は全国6地裁で集団訴訟が引き起こされている。今回の北海道の訴訟は、それら集団訴訟の第1陣のうち、最後の判決となった。

 

 これまでの判決では、東京、福岡、大阪、京都の4地裁が国の責任を認めて国に賠償を命じている。また、京都地裁ではメーカーの責任も初めて認定している。一方、2012年の横浜地裁だけは原告側の請求を棄却している。地裁判決の出た各訴訟とも、各地で控訴審が続いている。

 

 北海道訴訟の原告らは、1940年代以降に、道内各所での建設現場で、大工や配管工、塗装工などの建設作業従事者として働き、アスベスト粉じんに曝露、その後、石綿肺、肺がん、中皮腫等の重症の病気を発症した被害者と、その遺族たちで構成した。2011年4月、「北海道建設アスベスト訴訟」を提訴した。

 

 当時の建設現場では、絶縁体等にアスベスト含有建材が使われたが、国とメーカーはアスベストの飛散防止策を講じず、逆に、アスベスト含有建材の使用を奨励した。そのため、労働者たちは日常的にアスベスト粉じんを吸収し続け、肺ガンや中皮腫等の病に侵されてきた。

 


 訴訟では、国はアスベストの健康被害対策を取り得る立場にありながら、明確な対策をとらず、むしろアスベスト含有建材の使用を促す政策を展開してきたとして、国とメーカーの責任を問うものとなった。弁護団は「このような国策の下で、国と建材メーカーが一丸となって、人の生命・健康よりも利潤追求策を優先させ、建設市場へ膨大な量の石綿含有建材を流通させた」と指摘した。

 

 原告側は、アスベスト被害が、建設作業従事者の「職業病」であり、さらに被害が作業現場周辺の市民の健康をも奪ってきた「公害」であることを強調。国と建材メーカーによる複合汚染の法的責任の明確化を求めてきた。

 

  アスベスト被害の潜伏期間は長く、アスベストを吸い込んでから、10年から40年後に発症するケースも多く、「静かな時限爆弾」とも称される。アスベストの健康被害は早い段階からわかっていたが、政府がアスベストの輸入を全面禁止したのは2006年。

 

 メーカーのアスベスト建材使用がピークを越えた後に、ようやく対策を講じるという産業優先の政策を貫いた。こうした政府の恣意的な政策運営が、国民の健康被害の拡大を招いたとされる。翌07年以降、アスベストの労災認定者は、毎年1000名を超えている。

 

 作業中にアスベストを吸い込んだ労働者だけでなく、その家族、また工場の周辺住民などの健康被害も引き起こしている。

http://hokkaido-asbest.jp/

http://www.kyokenro.or.jp/lawsuit/