HOME11.CSR |欧州委員会 ミツバチなどの生態系に悪影響を与えるとして、ネオニコチノイド系農薬3種の恒久的規制へ。早ければ年内にも実施か。規制案判明(RIEF) |

欧州委員会 ミツバチなどの生態系に悪影響を与えるとして、ネオニコチノイド系農薬3種の恒久的規制へ。早ければ年内にも実施か。規制案判明(RIEF)

2017-03-28 16:08:54

beeキャプチャ

 

 欧州連合(EU)の欧州委員会は、ミツバチなどの花粉媒介生物に有害な3種のネオニコチノイド系農薬の使用を、年内にも欧州全域で全面禁止する規制案を提出する見通しであることがわかった。日本ではネオニコチノイド系農薬は使用され続けており、EUの全面禁止が実現すると、改めてミツバチへの農薬の影響が議論になりそうだ。

 

 EUは2013年に、3種類のネオニコチノイド系農薬(イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム)について、ミツバチの生存に受容不能なリスクを与えるとして、トウモロコシやアブラナ、ヒマワリなど開花植物の栽培に際して、2年間、使用を禁じる一時的措置を実施している。

 

 今回の規制案は、この一時的措置を恒久な規制に切り替えることを目指している。英紙ガーディアンが欧州委員会の規制のドラフト案を入手し、報じた。同案によると「ミツバチへの高度で急速なリスクがある」と指摘している。委員会の提案が5月の閣僚理事会・欧州議会で承認されると、規制は年内に実施される見通しだ。

 

 ネオニコチノイド系農薬の規制をめぐっては、農薬を製造する化学業界や、農薬を使用する農業事業者、環境NGO、住民団体、養蜂産業などとの間で長期に及ぶ綱引きが展開されてきた。しかし、EUは科学的データで農薬の危険性が示されたとして、2013年に3種への一時的使用禁止を実施した。今回、その成果を踏まえて、恒久的規制に切り替える方針だ。唯一の例外は温室栽培の場合に限るという。

 

 2013年の一時規制は、英国を筆頭とする規制反対諸国が反対票をまとめきれなかったことから欧州委員会の提案が実現した。その後、英国は反対の姿勢を和らげているうえに、EUからの離脱を決断したことから、英国農業団体からの農薬使用禁止への反対の動きが鈍るとの判断も、欧州委員会の全面規制方針の背景になっているようだ。

 

 「欧州農薬行動ネットワーク(PAN)」のMartin Dermine氏は「多くの科学的データはこれらの農薬がミツバチに影響を及ぼしていることを説明している。したがってこれらの農薬を市場に留めておくべきではない。われわれは他の支援団体とも共闘して、閣僚理事会・欧州議会で賛成票を勝ち取れるよう後押しする」と強調している。Avaazが集めたネット署名は440万筆に達している。

 

 日本のグリーンピースも「ミツバチと環境にとって非常に画期的なニュース。ネオニコチノイド系農薬は、ミツバチなどの花粉媒介生物に害を及ぼす数々の証拠が積み重ねられている。ただ、欧州委員会はこの3種の農薬以外の類似の農薬は引き続き使用許可している。すべての同様の影響を持つ農薬に同じ厳格な基準を適用すべきだ。日本政府は欧州委員会の判断とその背景の科学的証拠を重く受け止め、日本でも禁止に向けた議論を始めるべきだ」とコメントしている。

 

 ただ、ミツバチが農薬に汚染され、重篤な影響を被っているとする見方には強い科学的コンセンサスがある一方で、それらがミツバチが全滅するようなメカニズムになっているのか、という点については明確な解明がまだ行われていないとされる。今回の欧州委員会の規制案の根拠は、欧州食料安全機構(Efsa)が2016年に発行したリスクアセスメント結果に基づいているという。

 Efsa の分析は、独バイエルン社のイミダクロプリドとクロチアニジン系の農薬を使用した穀物の分析に基づき、またチアメトキサムについては、スイスのシンジェンタの農薬を使って実施した。委員会は両社の提示した資料ではリスクを回避するには十分な説明にはならなかった、としている。

 

https://ec.europa.eu/food/plant/pesticides_en