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海洋のプラスチックごみ汚染、北極圏の一部に流れ着き、“吹き溜まり”状態に。極域の生態系への悪影響の懸念。国際研究チームが検証(RIEF)

2017-04-20 18:09:27

Arcitcキャプチャ

 

  世界中の海洋に漂うプラスチックごみ(Plastic debris)が、汚染源の乏しい北極圏の一部に、集中して流れ着いていることが確認された。大西洋の海流の大規模な熱塩循環によって、グリーンランドの東からスカンジナビアの北部のバレンツ海にかけての海域に長い時間をかけて流れ着き、吹き溜まりとなっている。深刻な影響を海洋と生態系にもたらす懸念が指摘されている。

 

 スペインやフランスなどを中心とした国際的研究者で構成する「Tara Oceans」の研究チームを編成、仏船籍の船で調査分析を重ねた。その結果を、米科学誌「サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)」に公表した。研究チームは2013年、北極海域全体のプラスチックごみの状況を調査した。

 

 それによると、北極圏の極周辺海洋のうち37%の部分では、プラスチックごみはほとんどなかった(0,5mm以上のものを対象とし、ファイバー状のものは除外)。ところが、グリーンランドとバレンツ海では、対照とした地中海に比べて、中位値では検体数で上回り、重量でも3分の1強の汚染が示された。

 

 研究チームは、北極海の中でも特定の地域にプラスチックごみが集中していることから、大西洋を流れる「海洋のコンベヤーベルト」とも呼ばれる、海水の大規模な対流/熱塩循環によって、広範な大西洋上の汚染物質が北極へと運ばれ、海氷に阻まれて、グリーンランドやバレンツ海域で吹き溜まり状になっているとみている。大西洋の熱塩循環は衛星通信システムに対応した漂流ブイ1万7000個を使った調査でも確認されている。

 

  周辺住民への影響は、北極圏の居住者が少ないので、逆に一人当たりの汚染度は高くなっている。研究チームは調査結果から北極全体を漂うプラスチックごみの量は、100~1200㌧と推定している。これらプラスチックごみは、400㌧当たり3000億の微細なプラスチックを含んでいるとされる。周辺に居住する住民が直接摂取するケースは少ないが、魚類やアザラシ等の生態系への汚染を経由して、人体への悪影響も懸念される。

 

 研究チームが採取した検体には、釣り糸やシート状のフィルムのほか、破片や粒子など、赤道付近で採取されるプラスチックごみと同様の内容物が検出されたという。今回の調査結果について同チームは論文で、「プラスチックごみは、いったん海に入ってしまう、どこに到達するか予測不可能となるため、あらかじめ適切に管理することが重要」と指摘している。

 http://advances.sciencemag.org/content/3/4/e1600582.full