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「気候変動の激化がテロリストの活動を活発化させる」ドイツのシンクタンクが分析結果をまとめる。ISやタリバン、ボコハラムなどをケーススタディ(RIEF)

2017-04-23 01:26:49

refugee1キャプチャ

 

 気候変動の激化は、イスラム国(IS)などのテロリストの活動を活発化させる、と分析した報告書が公表された。ドイツのシンクタンクがまとめたもので気候変動による自然災害の増大等で、被害を受ける途上国の住民らを、過激派集団がリクルートし、テロリストに育てる可能性が増える、などと警告している。

 

 報告書はベルリンにあるシンクタンクのAdelphiがまとめた。「地球温暖化時代の暴動、テロリズム、組織犯罪(Insurgency, Terrorism and Organised Crime in a Warming World)」と題している。Adelphiは、4つのテロリストグループの活動と温暖化の関係を取り上げ、ケーススタディで分析している。

 

 分析の対象となったのは、①アフリカのチャドでのボコハラムによる気候変動と地域の不法状態②シリアでのISによる気候変動と渇水問題③アフガニスタンのタリバンによる気候変動と軍事④グアテマラの気候変動と都市暴力と組織犯罪ーーの各事例。これらを10年単位で分析した。

 

 その結果、気候変動の激化は、いずれの地域でも、テロリストグループの活動を2つの側面から強化しやすくしているという。1つは、気候変動による自然災害や水不足、食料不足の増大などで地域社会の荒廃が進む一方で、当該国政府が適切な対応をとれないことから、そのギャップをテロリストグループが埋めることで、彼らの支配力を強化できる環境になっている点だ。

 

 もう一つは、気候変動によって生命の危険に直面する経験を重ねた当該地域の住民らを対象に、テロリストがリクルートして、新たなテロリストとして育てやすくなる点だ。気候変動対策を取らない自国政府や、あるいは気候変動の原因の大きい先進国に対する不満が増長されることになる。

 

Chadキャプチャ

 

 こうした温暖化問題を利用したテロリスト活動が広がることを防ぐにはどうすればいいのか。報告書は処方箋として、5つの対策を各国政府に求めている。

 

 その一つは、気候変動対策と地域紛争調停などの介入政策を連携させ、政策のシナジーと共通利益を目指すコベネフィットの重視を求めている。たとえば、平和維持軍の活動に、自然災害対策や水不足対策などを連動させるわけだ。

 

 2つ目は、当該地域の政府や自治体のガバナンス力を強化する支援を行う際などに、気候変動の影響を緩和する地域での適応策計画と連携させること。これにより、住民は自分の国の政府や自治体に対する信頼力を回復する可能性が高まる。

 

 3つ目は、 持続可能な住民の生活基盤の整備に力を入れることだ。温暖化にも強い安定した生活環境を作ることで、テロリストの浸透にも対処できる。

 

 4つ目は、先進国政府が平和構築作業や気候変動の適応策などをとる場合、気候変動の影響を受けやすい農業や漁業にフォーカスを当てるとともに、テロリスト予備軍にされやすい若者や移民などにもフォーカスしてリスクや機会対策を考慮する必要がある。また地域の災害リスクを改善することでで、地域社会の結束を高め、テロリストグループの浸透への抵抗力を強化する。

 

 5つ目は、都市部でのリスク対応の強化をあげている。気候変動対策でも、都市機能の強化が課題となっていると同時に、紛争が激化し、都市機能が低下している地域においては、特に気候変動対策と自然災害対策、人道的支援、平和構築活動、紛争防止などの活動を総合的に展開することが望ましい、としている。

 

 報告書をまとめたLukas Rüttinger氏は「テロリストグループは、自然資源の利用を、『戦争の道具』として活用している。水や食料への住民のアクセスを人為的にコントロールしたり、水・食料不足の状態を意図的に悪化させて住民への影響力を高めたりしている」と警告。先進国が、政治・外交政策としての温暖化対策を展開することの重要性を強調している。

https://uploads.guim.co.uk/2017/04/20/CD_Report_Insurgency_170419_(1).pdf