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プラスチックを食べて分解する蛾の幼虫を発見、廃プラ対策に活用の可能性も。体内の酵素が影響の可能性。スペイン・英国の研究チームが報告(各紙)

2017-04-27 16:16:57

plasticeaterキャプチャ

 

  各紙の報道によると、魚釣りなどの餌として市販されている蛾(が)の幼虫の一種が、ポリ袋の主な素材であるポリエチレンを食べて分解することが分かった。スペイン国立研究協議会と英ケンブリッジ大学の研究チームが、米科学誌カレント・バイオロジー電子版に発表した。体内の分解酵素の作用と考えられ、特定して生産できれば、大量のポリエチレンごみの処理に利用できる可能性も指摘されている。

 

 この蛾は「ハチノスツヅリガ(Galleria mellonella)」で、日本の本州、四国、九州から沖縄に広く生息するほか、世界中でもみられるという。その幼虫は、釣り餌となるほかペットの爬虫(はちゅう)類などの餌にも利用されている。

 

ハチノスツヅリガの親
ハチノスツヅリガの親

 

 研究チームを率いたスペインのカンタブリア大学の発生生物学者フェデリカ・ベルトチーニ氏。きっかけは、2年前、裏庭に置いてあったミツバチの巣箱を掃除していた時だった。巣の中に寄生していたハチノスツヅリガの幼虫を取り出し、古いビニール袋に入れて、1時間後に袋をみると、幼虫が触れていた部分に小さな穴がいくつか開いていたという。

 

この幼虫が「プラスチック食い」です
この幼虫が「プラスチック食い」です

 

 ハチノスツヅリガは、もともとミツバチの巣を形作る蜜蝋(みつろう)を食べて育つため、有機化合物を分解する能力が高い。そこで、研究チームがポリ袋一つに約100匹の幼虫を入れて観察してみると、40分で穴が開き始め、12時間後にはポリ袋の重さが92mg減っていたという。つまり92mgを分解したわけだ。このピッチでいくと、100匹の幼虫で1ヶ月弱で5.5gのレジ袋を完全分解できることになる。

 

 分析の結果、幼虫が分解しているのではなく、幼虫の体内にある酵素が、ポリエチレンをエチレングリコールに分解していることがわかった。エチレングルコールは自動車エンジンの冷却液に凍結防止のため添加する用途などで知られている。

 

 これまでも別の研究で、蛾の幼虫のもつ腸内細菌がポリエチレンを分解することもわかっている。 ただ、ポリエチレンは高品質の樹脂で、リサイクルによって他の製品に転換でき、1㌧当たり500㌦で売買されることもあるという。したがって、ハチノスツヅリガの幼虫に分解させるより、リサイクルしたほうが経済効率は高いことになる。実用化には少し時間がかかりそうだ。

http://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(17)30231-2

http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/042600162/?P=2