HOME11.CSR |東京オリンピックの新国立競技場の建設工事で、熱帯林の破壊・人権侵害懸念のある現地企業の合板型枠使用の疑い。環境NGOが国際オリンピック委員会と日本政府に、緊急調査を要請(RIEF) |

東京オリンピックの新国立競技場の建設工事で、熱帯林の破壊・人権侵害懸念のある現地企業の合板型枠使用の疑い。環境NGOが国際オリンピック委員会と日本政府に、緊急調査を要請(RIEF)

2017-04-27 15:42:42

FoE2キャプチャ

 

 内外の環境NGOは、2020年の東京オリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設工事で、マレーシア・サラワクでの熱帯雨林過剰伐採問題で国際的に批判を浴びている現地企業社製の熱帯材合板型枠を使用している、として、国際オリンピック委員会(IOC)と競技場を建設する日本政府等の関係者に、緊急調査を要請した。

 

 
 要請を行ったのはFoE Japanやマレーシア現地の環境NGOなど。指摘によると、 昨年12月の新国立競技場の建設着工の数日前にも、40 を超える環境NGO等がIOC に対し、オリンピック関連の建設事業で使用される木材が合法かつ持続可能なものであることを確保するための日本政府の取り組みが、適切でないと警告する書簡を送付している。

 

 NGOらは、オリンピックで使用される木材について、生物多様性、気候変動、地域コミュニティなどへの悪影響を避けるためには、原産地を明確にし、伐採、製品化のデューデリジェンスを関連事業者に義務付ける手続きをとるよう求めてきた。

 

 ところが、NGOらの調査によると、4月3日に、競技場の建設現場で、シンヤン社のものであると思われる表示の付いた熱帯合板がコンクリート型枠に使われていることがわかった。シンヤン社は、違法伐採が横行し、森林破壊が世界で最も深刻な場所の一つであるマレーシア・サラワク州の6 大伐採企業の一つとして知られる。同社の森林伐採は手付かずの熱帯雨林を皆伐する手法で、かつ先住民族への人権侵害も指摘されている。

 

 FoE3キャプチャ

 

 その後、4 月18 日にも熱帯合板型枠の使用が確認されている。調査で確認された合板型枠は「E パネル」と表示されており、環境に配慮したとの表現になっている。しかし、NGOらはこの表示は、必ずしも環境面での持続可能性や人権侵害とは関わりのないことを保証するものではない、として問題視している。



 シンヤン社は、マレーシア・サラワク州の「ハート・オブ・ボルネオ」と呼ばれる、国境をまたがる保全地域を広範に含む原生林を組織的に伐採している。また地元住民や退職した同社の元社員らは、同社が自社の利益に反する懸念を示したり、行動を起こしそうな者を抑制するため武装した犯罪組織を雇っていると主張している。

 


 同社の問題を追及しているNGO「Markets for Change 」のペグ・パット氏は「シンヤン社はサラワクの熱帯林で最も悪名高い開発企業の一つであり、この企業からの合板はいかなる持続可能性基準をも満たしてはいない。シンヤン社の合板を使用することは、持続可能なオリンピックを開催するという日本のコミットメントに対して明らかな違反である」と、指摘、日本側の対応を求めている。



 Sarawak Dayak Iban Association のニコラス・ムジャ氏も、「シンヤン社の木材製品を使用することは、立場の弱い先住民族であるペナンやイバンの人々から慣習的権利や生計手段、文化的慣行を奪うことになる」と批判している。



 また日本側の問題点も指摘している。大会組織委員会が環境面の持続可能性及び人権に関する基準からコンクリート合板型枠を免除しているほか、適用される方針は、合法性について極めて弱い規定でしかない、環境省の「グリーン購入法」であり、この規定を利用して違法性の高い木材が合法な木材として日本に輸入されている、という。環境省が環境破壊を助長する規定を提供しているわけだ。

 


 FoE Japan の三柴淳一氏は、 「国立競技場は日本政府が建設する建造物であり、国の威信を示す場所でなければならない。しかし、オリンピック関連の建設において弱い環境・社会基準が適用され、不正企業からの木材を使用しているという証拠を考えると、オリンピック及び日本にとっての不祥事なりかねないと懸念する」と指摘している。そのうえで、オリンピック関係者に対して、環境監査のできる第三者による公開調査の実施を求めている。

 

http://www.foejapan.org/forest/library/170421.html