HOME5. 政策関連 |「輸入禁止の石綿」、東京、大阪、神戸の3税関が合計8件を輸入許可し、その後、不自然な「黒塗り訂正」。健康被害意識の薄さと、取り扱いの杜撰さ浮上(各紙)  |

「輸入禁止の石綿」、東京、大阪、神戸の3税関が合計8件を輸入許可し、その後、不自然な「黒塗り訂正」。健康被害意識の薄さと、取り扱いの杜撰さ浮上(各紙) 

2017-05-08 22:55:32

asbest3キャプチャ

 各紙の報道によると、法律で輸入が原則禁止となっているアスベスト(石綿)含有、と明記された輸入申告を、東京、大阪、神戸の3税関が2012~16年の間に合計8件の許可を与えていたことが分かった。8件とも、許可後に輸入者が石綿含有品ではなかったと訂正報告をしているが、一部の税関では確認作業を怠っていた。深刻な健康被害を起こす石綿の輸入処理の杜撰さが明るみに出た形だ。

 毎日新聞が3税関への情報開示請求でデータを入手し報道した。 物品を輸入する際は、輸入者側が税関に品名や重量などを申告し、税関が審査後に許可する。ところが毎日新聞が入手した輸入許可通知書では、12~16年に東京で5件、大阪で2件、神戸で1件、それぞれ英語で「Asbestos(アスベスト)」と明記された物品の輸入が許可されていた。

 例えば15年に、東京税関は石綿製品50kgをドイツから、大阪税関は石綿含有の摩擦材320kgを中国から、それぞれ輸入することを許可した。しかし、その後、8件全てについて、輸入者が訂正願の書類が添付された。たとえば、ドイツの製品は鉄鋼製品、中国の摩擦材は自動車用クラッチ部品など、いずれも石綿を含まない品名に変更されていた。

 開示書類は訂正願の日付や物品の詳細については黒塗りされており、輸入後どのような経緯で訂正したのか、詳しい事情は不明のまま。各税関とも毎日新聞の取材に対して「個別の内容は答えられない」としているという。このうち、大阪税関は「書類を確認したが、現物は見ていない」と答えたとしている。

asbestos2キャプチャ

 石綿は吸い込むと、肺などに健康被害を引き起し、最悪の場合、中皮腫などのガンで死亡するリスクがある。過去にも石綿を扱った職場で労災が多発したほか、石綿使用工場の周辺住民にも被害が及んだケースが指摘され、訴訟も全国で展開されている。

 このため、12年に労働安全衛生法で国内での新規使用や輸入は原則禁止された。研究目的の場合などに限り、厚労省の許可を得れば輸入できるが、厚労省は、今回、発覚した8件のいずれについても許可はしていないという。

 これに対して、税関を管轄する財務省関税局は、毎日新聞の取材に対して、「審査は適正に行われた。個別の輸入申告について、どのような審査をしたかは答えられない」とだけ回答したという。

 石綿対策全国連絡会議の古谷杉郎事務局長は「石綿が入っていると明記しているのに輸入を止められないなら、いくらでも輸入できてしまう。税関のチェックが十分なのか検証が必要だ」と指摘している。

 

asbestos1キャプチャ

 

  3税関への情報開示請求で開示された輸入許可通知書には、明確に石綿と明記されている。にもかかわらず、税関が輸入許可を出した後、なぜか輸入者側が「石綿ではない製品」への変更を求める申告が出し、それを税関が受理していた。なぜ、いったん輸入許可を与え、なぜ訂正が出たのか、本当に輸入されていないのかなどの疑問への説明は一切ない。

 

 税関側は、物品の詳細や輸入者名、修正の日付などは「法人や個人の利益を害する恐れがある」として黒塗りにしたと説明している。

 

 しかし、広瀬弘忠・東京女子大名誉教授は「石綿と書かれた製品が堂々と輸入許可されてしまうとは信じ難い。そもそも石綿と書いて輸入許可してもらった人が、なぜ『石綿でなかった』とわざわざ変更しようと思ったのか。その経緯にも不明な点が多く、税関は情報開示すべきだ」と指摘する。

 

 財務省によると、貿易統計は翌年度以降に誤りが判明しても訂正されないという。12~15年分の7件は貿易統計上、今も石綿含有品として残っており、少なくとも数カ月後になって訂正願が出たことになる。

 

https://mainichi.jp/articles/20170506/ddm/001/040/140000c