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プルイット米環境保護庁長官 土壌汚染対策の「スーパーファンド事業」の促進を命じる指令。浄化作業を地方委託から連邦直轄へ切り替え(RIEF)

2017-05-16 17:17:59

superfund2キャプチャ

 

  米環境保護庁(EPA)のプルイット長官の言動は、温暖化問題への懐疑論で注目を集めるが、米国の環境金融問題の出発点である土壌汚染対策のスーパーファンド事業を促進する指令を出した。同氏は「汚染サイトの浄化をEPAの最優先レベルに置く」と宣言している。

 

 スーパーファンドは、1980年に制定されたCERCLA(包括的環境対策処理補償責任法)に基づき、産業活動で汚染された土壌汚染サイトを国が指定し、迅速な汚染処理を優先的に行う仕組みだ。1970年代後半に住宅地で発覚した産業起因の土壌汚染対策のために取り組まれてきた。

 

 同法によって浄化を促進するとともに、汚染者責任を徹底して追及する体制をとったため、融資先企業の汚染責任を金融機関が負うケースも発生、環境問題を金融機関が正面からとらえる契機ともなった。同法はその後、SARA(修正・再授権法)、再活性化法へと発展し、土壌汚染懸念地のブラウンフィールドの再開発の促進にも活用されている。

 

 今回、プルイット長官が、スーパーファンド関連施策に政策の優先度を置く、と宣言したのは、温暖化対策を最優先課題としたくないという政治的判断もあるのかもしれない。それだけではなく、同法によって指定されている大規模汚染サイトの浄化作業を促進したいという実務的な判断もあるようだ。

 

 現行の規定では、浄化コストが5000万㌦以上と見込まれるサイトについては、EPAの土地緊急管理局(OLEM)が州や市町村の地方当局に委託する形で実施している。ただ、その結果、地域事情を重視する判断が入り込んだり、地域の自治体同士の調整が難航して作業の遅れを招いている事態も指摘される。

 

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 今回の長官指令では、そうした浄化作業をスピードアップするために浄化作業自体にEPAが直接かかわるとしている。プルイット氏は「EPAが直接かかわることで、適格な管理が進むとともに、複数州をまたぐ調整も容易になる」と説明している。

 

 プルイット氏の宣言は、思いつきというわけでもなさそうだ。長官就任以来、時折、このテーマに触れてきたほか、4月にはインディアナ州のイーストシカゴのスーパーファンド指定サイトの鉛汚染地域を視察に訪れている。また、今月に入ってからも連邦議会で議員たちとこの問題で議論を進めていた。


 

 ただ、スーパーファンドサイトの浄化には膨大な費用がかかるのは間違いない。ホワイトハウスの予算管理局は次年度の予算編成でファンド関連だけで3億3000万㌦を削減する意向を示している。EPAが直接、浄化事業に優先的に取り組み、浄化を促進するとなると、予算はむしろ増加する。EPAでは、既存の有害物質浄化の別ファンドを活用するほか、行政コストの削減等で対応すると説明しているが、現実に可能かは今後の検討に委ねられる。

 

 スーパーファンドの対象に指定された土壌汚染サイトはNatonal Priorities List(NPL)にリストアップされている。現在、その数は全米で1180件に上り、提案中のサイトが50件ある(5月11日現在)。またこれまでに浄化が完了したサイトは1112件、部分的に完成したところが44件となっている。

 

https://www.epa.gov/newsreleases/epa-administrator-announces-new-directive-prioritize-superfund-cleanups

https://www.epa.gov/superfund/superfund-national-priorities-list-npl