HOME12.その他 |岐阜県御嵩町で、JR東海・リニア中央新幹線建設の残土処分場候補地を巡り、希少植物自生林の保護策をJRに聞いた委嘱アドバイザーに、町が退職を迫る騒ぎ(各紙) |

岐阜県御嵩町で、JR東海・リニア中央新幹線建設の残土処分場候補地を巡り、希少植物自生林の保護策をJRに聞いた委嘱アドバイザーに、町が退職を迫る騒ぎ(各紙)

2017-05-15 01:49:54

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 JR東海が推進するリニア中央新幹線で膨大に排出される建設残土処分候補地の一つとされる、岐阜県御嵩町の山林に、希少植物のハナノキやシデコブシが群生していることが判明。同町の生物環境アドバイザーがJR東海に問い合わせたところ、町は「ルール違反」だとして、同アドバイザーに退職届に署名するよう求める事態が起きている。

 

 朝日新聞が報道した。希少植物の群生地は、同町美佐野のリニア新幹線のトンネル出口が予定されている地域の近くにある山林(約90万㎡)。町有地と民地が混在し、かつてゴルフ場が計画されたこともあるという。

 

 御嵩町は同地を、岐阜県を通じて残土処分の候補地に挙げ、JR東海側が現在、調査しているという。工業団地にする構想もあり、地元では雇用増をもくろんで、一帯を開発・埋め立てることを歓迎する意見もある。

 

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 ところが現地では、地元住民の調査で希少種のハナノキの成木が80本、稚樹400本以上が見つかった。また、希少植物のミカワバイケイソウ、シデコブシの自生や、希少鳥類のサシバの営巣やミゾゴイが目撃されている。

 

 JR東海はまだ処分地として正式決定していないことから、希少種をどう扱うのかという環境保全措置等については一切、公表していない。しかし、自然保護関係者によると、開発する場合、最低限の湿地保全、植物移植、種子保存の準備には1年以上かかるという。

 

 御嵩町では、1996年10月に当時の柳川喜郎町長が、暴漢に襲われ重傷を負う事件が起きた。同地での産業廃棄物処理場建設に反対して当選した柳川町長を追い落とす動きが廃棄物処理業者らにあったとの見方もあったが、岐阜県警は犯人を見つけることができないまま時効となっている。

 

 町長襲撃で犯人は逮捕されなかったが、同町では1997年に産業廃棄物処分場建設の是非を問う住民投票を実施。処分場建設は避けられた。また、自然の豊かな地域だけに、環境問題への住民の関心が高く、町は独自のレッドデータブックを作成している。

 

 こうした環境の中で、同町の委嘱を受けて生物環境アドバイザーや希少野生生物保護監視員をしている和裁士、篭橋まゆみさん(62)が3月、JR東海に対して、ハナノキ自生地での環境調査の報告会の予定などを電話で問い合わせたという。

 

 すると、その後、同町から篭橋さんに対して「準公務員的立場なのに、町を通さずにJR東海と連絡を取ったことはルール違反」と抗議があった。4月21日には、町職員が篭橋さんを公民館に呼びつけ、行動について注意した。

 

 その際、町職員は篭橋さんに対して、今後も行動は制約されると告げ、篭橋さんが「辞めればいいのか」と聞くと、職員は事前に用意した退職届を篭橋さんに示して署名するよう求めたという。篭橋さんは町に対して、解職を求める理由を示すよう求めているが、町は応じていないという。

 

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 朝日新聞の取材に対して町の担当者は「こちらから『辞めてほしい』とは言っていない」と話しているという。その一方で、町がJR東海からどのような依頼を受けたのかの説明はない。町の姿勢に対して篭橋さんは「いま動かないと、保護には間に合わないのに、町はJR東海に意見を言うどころか、口封じだ」と話す。

 

 渡辺公夫町長は「処分地は正式決定していない。今後のJR東海の計画次第では断ることもできる」と取材に説明している。篭橋さんについては「肩書を利用してJR東海と話しており、見過ごせない」と今も問題視している。

 

 ただ、同町のアドバイザー設置の指針には解職規定がない。このため、町は本人から退職の申し出がない限り、2年後の任期満了まで委嘱を続けるという。籠橋さんに対して事前に退職届を用意して署名するよう手渡した意図についての説明はない。

 

 同町は今年4月に公表した環境基本計画第三次改訂版で、「自然と共生し 歴史・ 文化を未来にひきつぐ 里山のまち・ みたけ」として、町の環境像を位置付け、里山保全、生物多様性維持など4分野を重点エコプロジェクトとしている。

 

 ハナノキは、日本固有種で、カエデの仲間の落葉高木。環境省のレッドリストでは、絶滅の恐れがある絶滅危惧2類に分類される。岐阜県東濃地方や長野県、愛知県などの限られた山間湿地などに自生、春に赤い花をつける。愛知の「県の木」に指定されている。

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