HOME |米環境NGO「生物多様性センター(CBD)」、トランプ政権による環境保護庁などでの気候変動情報の「検閲強化」の停止を求める訴訟を提起(RIEF) |

米環境NGO「生物多様性センター(CBD)」、トランプ政権による環境保護庁などでの気候変動情報の「検閲強化」の停止を求める訴訟を提起(RIEF)

2017-05-26 00:33:30

CBO1キャプチャ

 

 米国の環境NGOの「生物多様性センター(The Centre for Biological Diversity (CBD) 」は、トランプ政権になって気候変動関連情報が検閲され、国民への情報開示が阻害されているとして、環境保護庁(EPA)と、国務省、エネルギー省、内務省の4省庁をワシントンDCの地裁に提訴した。

 

 CBDは、トランプ政権発足後、EPAなどの政府のウェブサイトで、気候変動に関する情報の発信が制限されていると指摘、連邦情報公開法(freedom of information law)に基づき、3月30日に、各官庁に情報開示を要請した。しかし法廷開示期限が過ぎても各官庁からの回答がなかったとして、4省庁を提訴した。

 

 CBDのTaylor McKinnon氏は「トランプ政権が、気候変動情報を検閲し、公益情報の開示を拒否していることは、科学を否定する危険で不法な状況を続けていることになる。検閲によって気候変動科学を変えることはできないし、開示の遅延や情報を隠すことは、法的に許されない」と批判している。

 

CBO2キャプチャ

 

 実際、トランプ大統領が1月に正式に就任して以来、EPAのサイトなどでは、外部から自由にアクセスできるオンラインの気候変動関連のデータ情報や、温暖化関連の政策情報などは「精査中」などの表示が出て、外部からアクセスできないケースが増えている。

 

 科学者の中からは、これまでの気候変動のデータが、公開情報から消去されてしまうのではないかと危惧する意見も出ている。

 

 トランプ大統領は、石炭産業の復興や石油生産の拡大を重要視している。気候変動関連の情報は、その政策目的に反して、「化石燃料の燃焼が気候変動を悪化させ、海面上昇などを引き起こす」ということを強調する情報が多いことから、就任前から「気候変動の科学的情報」を、公然と批判してきている。

 

 今回のCBDの訴訟は、気候変動の危険性へ対応するための行動を促進し、気候変動から社会を守るための一連の訴訟の一つでもある。米国のコロンビア大学の気候変動関連法のSabin Centerの調査によると、米国では気候変動関連の訴訟は他の国の3倍以上に及ぶ654件あるという。

 

 訴訟の主な内容は、空港や石炭火力発電所の建設計画等への差し止め請求などの個別事業反対の訴訟から、21人の若者たちによる「我々の未来を守る」ために、より強力な気候政策の実施を政府に求める訴訟まで、多様にある。

 

 気候変動関連の訴訟として、国際的に有名なのは、パキスタンの農民が気候変動の影響から市民を守るよう政府規制を強化することを求めた訴訟や、ノルウェーのNGOが北極圏での石油採掘の差し止めを求めた国際訴訟などがある。

 

  気候変動関連の訴訟の最近の傾向として、途上国で の提訴が増加基調にあるという。途上国の場合、環境関連法の整備が不十分な問題もあるが、気候変動の激化によって「気候変動難民」が発生することへの懸念の高まりも大きいという。

 

http://www.biologicaldiversity.org/news/breaking/