HOME8.温暖化・気候変動 |南極の巨大氷壁のラーセン棚氷から、1兆㌧の氷塊が海洋に流出。氷塊の表面積は東京都の2.7倍。温暖化の加速で、不安定さが増す棚氷の状況を象徴(RIEF) |

南極の巨大氷壁のラーセン棚氷から、1兆㌧の氷塊が海洋に流出。氷塊の表面積は東京都の2.7倍。温暖化の加速で、不安定さが増す棚氷の状況を象徴(RIEF)

2017-07-13 12:15:34

laresenC2キャプチャ

 

  世界中の気候変動学者が注目してきた南極の巨大な棚氷、ラーセンC(Larsen C)棚氷から、観測史上最大級となる1兆㌧の氷塊が、完全に分離したことが分かった。数か月にわたって亀裂を観測していた英国のスワンジー大学の研究者らが12日、発表した。

 英ウェールズにあるスワンジー大学はエイドリアン・ラックマン(Adrian Luckman)教授が中心になり、西南極の氷層の変化を記録する「プロジェクト・マイダス(project Midas)」を通じて、ラーセンC棚氷の観測を続けてきた。http://rief-jp.org/ct4/66978

 棚氷の分離は、米NASAの Aqua MODIS satellite からの熱赤外線イメージ解析で確認された。棚氷の完全分離は、今月10日から12日にかけての間に発生したことがわかった。分離された棚氷の表面面積は約5800㎢で、東京都の2.7倍の広さだ。

 

 分離された棚氷は、「A68」と名付けられた。棚氷からの氷塊の分離は自然現象だが、そのペースは地球温暖化により加速していると考えられている。ラックマン教授によると、分離した氷塊の体積は棚氷全体の約12%以上に相当し、今までに分離が記録された氷塊の中でも上位10位以内に入る巨大さだという。

 

larsenCキャプチャ

 

 この氷塊は分離前からすでに海洋に浮いた状態になっていたので、直ちに海面上昇は生じないとみられる。だが、分離によってラーセンC棚氷がせき止めている内陸部の氷河がいずれ海に流出する可能性も指摘されており、今後の変動が気になる。

 

 スワンジー大学の研究員は、ラーセンC棚氷の残りの部分は自然に再膨張しており、亀裂が生じる前に比べて、現在は潜在的に不安定さが増していると、指摘している。ラーセンC棚氷に隣接するラーセンA棚氷は1995年に、同Bは2002年にそれぞれ突然崩壊した。それらはばらばらになって海洋に漂った。ラーセンCも同様の経緯をたどる可能性が指摘されている。

 

 ラックマン教授は「何か月にもわたって棚氷の亀裂の推移を見守ってきたが、最後の数kmの分離に随分時間がかかった。今後、分離によるラーセンC全体への影響や分離された氷塊の動向などについて引き続き、モニタリングを続けていく」と述べている。

 

 ラーセンC棚氷は全体で厚さ200m~600mの規模で、後方の氷河からの流れを受ける形で、南極半島の端から海洋に突き出る形となっている。チームの一人、Martin O’Leary教授は「棚氷の分離は自然現象であり、気候変動との直接的な関係は証明されていないが、気候変動の進行が棚氷を非常に不安定な状態にしていることは間違いない。他の棚氷が不安定な状態になっている兆候を監視していく」と語っている。

http://www.swansea.ac.uk/media-centre/latest-news/theonetrilliontonneiceberglarsenciceshelfriftfinallybreaksthrough.php