HOME11.CSR |2016年に殺害された環境保護活動家や地域の先住民ら、過去最高の200人に達する。エネルギー・森林開発事業等に絡む紛争で事業者側から迫害。投資家もリスク意識薄く。英NGOが調査発表(RIEF) |

2016年に殺害された環境保護活動家や地域の先住民ら、過去最高の200人に達する。エネルギー・森林開発事業等に絡む紛争で事業者側から迫害。投資家もリスク意識薄く。英NGOが調査発表(RIEF)

2017-07-17 23:42:22

 

 英国の環境・人権NGOの「Global Witness: GW:グローバル・ウィットネス」は2016年に世界各地で殺害された環境保護関連の活動家や抗議活動への参加者が少なくとも200人に上り、前年の185人を上回る過去最高になったと発表した。死者の4割は、紛争が発生した地域を生活基盤とする先住民だという。

 

 GWは2012年から調査を始めているが、今回の死者数は過去最悪。また記録されていない事件もあり、実際に殺害された人数はさらに多いとみられる。

 

 環境問題関連の殺人事件が発生した国は、昨年は24カ国で、一昨年の16カ国から急増している。もっとも事件が多かったのはブラジルで、49人が1年間で殺害された。ブラジルでの犠牲者のうち16人は熱帯雨林での農地拡大や森林伐採に反対した地域住民だった。

 

  2016年の犠牲者を産業別にみると、鉱山業と石油プロジェクト事業での紛争による死者数が世界全体で33人と最も多かった。伸び率が高いのは、森林伐採に関連する林業など。エネルギー開発や森林伐採などで地域の平穏が荒らされることに抗議する先住民らが犠牲者の4割に達している。地域別では6割が中南米諸国で発生している。

 

 犠牲者数でブラジルが最も多かったほか、人口当たりの犠牲者数ではニカラグアが最悪。またホンジュラスは過去5年でならしてみると、もっとも犠牲者比率の高い国になっている。コロンビアは 昨年、長年続いていた左翼ゲリラと政府軍との紛争で和平が成立したが、犠牲者数は急増した。インドも犠牲者数は3倍増するなど、各国に犠牲が広がっている。また自然国立公園の管理人や森林保全人が開発主導のグループに襲われ、少なくとも20人が死亡したという。

 

GW4キャプチャ

 

 GWは、こうした開発反対者に対する暴力的行為に対して、各国政府や開発ビジネス業者は、十分な対応策を立てていない、と指摘している。地域でのエネルギー開発や森林開発などは住民に十分な情報を提供せず、住民同意を得ないまま強硬する事例が多いという。その結果、住民との衝突に至り、対立の過程で反対運動の中心人物が犠牲になったりするケースが少なくない。

 

 また、そうした事業に資金を拠出している開発銀行や投資家は事態を十分把握しないままファイナンスを継続することで、結果的に地域住民を脅かす「犯罪」に手を貸している、と批判している。環境活動家や地域の土地所有者をターゲットとしたこうした犯罪や不正裁判等が頻発しているのは、途上国だけではなく先進国でも起きているとしている。

 

GW2キャプチャ

 

 その事例として、昨年、米国で起きたダコタ・アクセス・パイプライン建設問題(DAPL)による先住民排除事件が代表だ。同パイプライン建設は、オバマ前政権時代にいったん、ルート変更が事業者に対して指示されたが、トランプ政権になって反故にされ、先住民を暴力的に排除する形で建設が進められたことで、世界的な非難を受けている。

 

 GWのキャンペーン担当者、ベン・レザー(Ben Leather)氏は「暴力は世界的に広がりをみせている。その細大の理由は、殺人事件を犯した犯人が、当該国当局によって罰せられていないからだ。地球を守る闘いは急速に激しさを増しており、人の命がその犠牲となり得る状況だ。より多くの国でより多くの人々が、土地を盗む者や環境を破壊する者らに対抗する選択肢しか残されなくなっている」と述べている。

 

 犠牲者の4割が先住民で、地域の森林や自然の開発を阻止しようとして事業者側による犯罪の標的になったということは、犠牲者の痛ましさだけでなく、温暖化ガスの吸収源である森林や自然の消失を加速させるという問題もはらんでいる。2016年の調査によると、先住民が生活の基盤としている森林等は熱帯雨林の全CO2吸収源の4分の1を占めているという。

 

file:///C:/Users/yfcha/OneDrive/%E7%94%BB%E5%83%8F/Global_Witness_defenders_annual_report_2017_EMBARGOED_PR.pdf