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米国メキシコ湾のガルフコーストで「牡蠣殻を海に返す」運動。従来、埋め立てていた廃棄物の牡蠣殻で海洋の浄化・牡蠣の生育環境の改善目指す(RIEF)

2017-08-08 07:34:04

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  牡蠣の一番おいしい食べ方は、殻の付いた生のままペロリと食べること。残った牡蠣殻はどうなるか。米国メキシコ湾岸のガルフコースト地域は米国の牡蠣の67%が消費される大産地。多くのシーフードレストランから大量に排出される牡蠣殻は、これまで廃棄され埋め立てられていた。これを、海に返す運動が始まっている。

 

 「牡蠣殻を海に返す」運動を始めたのは、アラバマ州の沿岸環境保護の活動を展開しているNPOの「アラバマ沿岸財団(Alabama Coastal Foundation: ACF)」。昨年10月に、牡蠣殻廃棄物を扱う廃棄物管理会社の「Republic Services」と共同で、牡蠣ガラリサイクルプログラムを運営し始めた。

 

 当初は、趣旨に賛同する数軒のレストランで始まった。現在は29軒に広がっている。従来は客が山盛りの牡蠣を平らげた後の牡蠣殻の山は、他の廃棄物と一緒に、Republic Services が廃棄物として回収し、近郊の処理地で埋め立て処分されていた。一方で、沿岸部の海洋では過剰な開発や海洋汚染で荒廃がさらに進む。そこでACFは、こうした状況を回復させるために牡蠣殻の活用を思いついた。

 

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 牡蠣殻は海に戻されると、海中で固まってブロックを形成し、牡蠣が育成するオイスターベッドを広げる。牡蠣殻の効果は、牡蠣の生息環境の改善、周辺の水質改善、沿岸部の浸食防止などの多様な役割を発揮するのだ。ただ、これまで土中に埋め立てていた牡蠣殻を、海洋にそのまま投棄すればいいわけではない。

 

 ACFが開発したシステムでは、まず、レストランの喧騒が静まった月、水、金の隔日の午前3時ころ、Republic Services の車がレストランを回って、山と積まれた牡蠣殻を回収する。牡蠣殻はいったん自然環境で数か月間、貯蔵される。この間に空気に晒して酸素を吸収させた後、海に戻す。いわば海洋の「活性炭」的な機能を発揮するという。

 

 ACFとRepublic Servicesのパートナーシップ活動によると、回収する牡蠣殻は280万㌧で、ガルフ湾沿岸の7.2エーカーをカバーする予定。活動費用については、自然漁業・野生生物財団( National Fish and Wildlife Foundation)からの寄付金24万3000㌦を得ている。

 

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 牡蠣殻を一つ海に戻すことで、10の赤ちゃん牡蠣の生育が可能になるという。また成長した牡蠣は毎日、15ガロン(約56.7㍑)の水を浄化する能力がある。したがって牡蠣殻が牡蠣の生育を助けることで、牡蠣の海水浄化能力が再生されるわけだ。

 

 ガルフコーストは牡蠣の大産地だが、長年にわたる乱獲や病気、水質汚染などの影響が、牡蠣の生産品質の劣化や生産量の減少につながっているとされる。さらに、メキシコ湾では2010年にBPが起こした深海底油田からの漏洩事故(Deepwater Horizon oil )の影響も長く続いているとみられる。

 

   2012年には自然保護団体(Nature Conservancy :TNC)がBPの事故からの海洋回復作業のために1億5000万㌦ の投資の一部として、100マイルの沿岸再生計画を含めた牡蠣養殖海域の回復活動が展開された。今回の「牡蠣殻を海に返す運動」はこれらの活動を受け継ぐものとなる。

 

https://www.joinacf.org/oyster-shell-recycling-program