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アスベスト被害での中皮腫による死者数、世界で年間3万8400人、日本でも年1357人。広がる被害(各紙)

2017-09-05 11:01:13

asbestキャプチャ

 各紙の報道によると、建築資材などに用いられたアスベスト(石綿)が主な原因で発生するがんの一種「中皮腫」による死亡者が、世界全体で年約3万8400人に達するとの新たな推計が明らかになった。日本でも年間平均1357人の死亡者が出ている。日本の産業医大(北九州市)などの国際研究チームが4日、シンガポールで開催中の世界労働安全衛生会議で発表した。

 調査は、信頼できるデータがそろっている日本など59カ国での中皮腫死者の性別や年齢等のデータを基にして、データが不十分な中国などの国や地域については、それぞれの石綿の使用状況も踏まえて推計し、2012~14年の世界全体の年平均死者数をはじき出した。

 これまで、国によってアスベストの使用状況や中皮腫患者の統計等がそろっていないことから、世界全体の被害死者数は明確になっていなかった。今回の推計で、アスベスト被害が世界的に広がっており、現在も進行形であることが明らかになった。

 研究チームの代表者で豪シドニー大石綿疾患研究所の高橋謙所長(環境疫学)は「最新のデータを使って精度の高い推計ができた。これほど多くの被害をもたらすアスベストは、世界中のどこでも使用を禁止すべきだ」と指摘している。

  中皮腫はアスベストを肺に吸い込んでから数十年を経て発症する。日本では1970年代から90年代にかけて絶縁材料などに利用するためアスベストが大量に輸入されたが、その間、欧米での被害が明確化されていたのに、政府の対応が遅れ、製造販売の禁止は12年まで引き延ばされた。それまでに体内に吸引したアスベストによる被害死者数は今後も増加していくとみられている。

  アスベストの製造加工に従事した労働者が吸引する労災被害のほか、阪神淡路大震災や東日本大震災などで、アスベスト含有の建材で建てられた住居等が崩壊し、大気中に飛散したアスベスト粉塵を一般の人が吸引して発症するケースもある。吸引した時期と、中皮腫の発症時期が大きくずれるケースが多いことから、被害の把握が遅れやすい。

 世界保健機関(WHO)では、世界中で1億2500万人が職場でアスベスト吸引のリスクにさらされていると指摘しており、実際にアスベスト被害で、中皮腫をはじめ、肺がん、喉頭がん、卵巣がん、じん肺の一種「石綿肺」など関連疾患を発症して死亡する人は、年間約20万人との大まかな見積もりを公表している。