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東京オリンピックの新国立競技場での違法伐採木材の使用問題。現地のマレーシア・サラワク州の住民らが安倍首相に「木材使用中止」を求める嘆願書送付(RIEF)

2017-10-18 11:13:17

sarawaku1キャプチャ

 

  東京オリンピック・パラリンピックに向けて建設中の新国立競技場の建設現場で、違法伐採や生態系破壊等の懸念のある熱帯雨林木材が使用されている問題で、木材の産地の一つ、マレーシア・サラワク州の先住民族らが、安倍晋三首相に緊急の嘆願書を送付した。同建設現場で使用されている木材生産によって生活の基盤を脅かされる甚大な影響を受けており、早急にリスクの高い木材の使用を停止するよう求めている。

 

 書簡を送付したのは、マレーシア・サラワク州のロング・ジェイク村のプナン人コミュニティの住民たち。住民を代表する形でマトゥ・トゥガン村長が、「プナン人の森や暮らしを破壊する企業からの木材調達をやめるように」という緊急の嘆願書を送った。http://www.foejapan.org/forest/library/pdf/171010.pdf

 

 それによると、2020年オリンピック東京大会に使われる新国立競技場の建設に使われている木材は、マレーシアのシンヤン社がロング・ジェイク村の周辺地域で伐採した合板であることが、今年年4月にNGOが建設現場で集めた証拠により確認された、としている。同社は、同地での森林伐採をおよそ20年間にわたり続けており、これまでに違法伐採や熱帯林の破壊、周辺住民らへの人権侵害などを引き起こしていると指摘している。


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 これまで同村の地域住民は、シンヤン社による木材伐採やパーム油農園への転換などに反対し、自らの森林を守るため道路封鎖等の手段で対抗してきた。また住民らはシンヤン社に対して彼らの慣習的権利を侵害しているという訴訟を起こし、裁判は続いている。

 

 しかし、現在でも、シンヤン社は伐採のため、地域住民の土地への侵入を止めていないという。住民らは今回の安部首相への書簡の送付を、「残された森を守るための最後の試み」と位置づけ、シンヤン社の製品を購入している日本の首相に、購入を停止するよう「直訴」した形だ。

 

 書簡では、安部首相に向けて、「総理大臣、どうかシンヤン社が私たちから盗んだ木材を日本が受け入れないようにしてください。日本がこの木材を受け入れ続ける限り、彼らは毎日、森林の伐採と丸太の搬出を続けます」と訴えている。



 また「シンヤン社は、私たちの祖先から受け継いできた森を承諾や同意なしに伐採してきました。彼らは私たちの意見やニーズを尋ねてきたことはありません」とも指摘している。

 

 同社による人権侵害については、すでにマレーシア国内でも認定されている。マレーシア人権委員会(SUHAKAM)は2007年に、住民たちの窮状について調査をし、シンヤン社の伐採活動が地域住民をさらに貧しい状況に追い込んでいることを明らかにしている。

 

 住民たちの訴えに対して、内外の環境・人権NGOらも支援の行動を起こしている。スイスのブルーノマンサー基金、マレーシアのサラワク・ダヤク・イバン協会、環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク、 マーケット・フォー・チェンジ、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、FoE Japanなどだ。



 国際オリンピック委員会(IOC)と東京大会当局は、不十分な木材調達基準や調達木材のサプライチェーンの透明性の欠如について、NGOや市民団体などから再三の指摘を受けているが、これまで、明確な対応をしていない。「環境先進都市」推進を掲げる小池百合子東京都知事も、この問題ではだんまりを決め込んでいる。


 http://www.foejapan.org/forest/library/171010.html