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世界の森林消失面積、昨年1年間で日本の森林全面積を上回る29.7万㎢に。前年の51%増。ブラジルとインドネシアの森林火災の影響大きく。森林NGOが報告(RIEF)

2017-10-26 12:39:19

GFW2キャプチャ

 

  ネット上で世界の森林動向を可視化している森監視NGOの 「グローバル・フォレスト・ウォッチ」(GFW)は、2016年の一年間だけで、世界の森林消失面積が前年比51%増の29万7000㎢に達した、と発表した。日本の森林面積を上回る量が消えたことになる。ブラジルとインドネシアの森林火災が主な要因で、いずれも温暖化により干ばつに拍車がかかっていることが影響している。

 

 GFWが統計監視を始めた2000年以来最大となった。米メリーランド大学のデータをGFWがまとめた。日本の国土は37万8880㎢でその七割に当たる25万㎢が森林なので、日本の森林全体上回る森が一年で消えたことになる。ただ、同統計は森林の消失面積のみを計測しており、再生や新たな植林などによる森林の純変動は考慮していない。

 森林消失の最大の要因は火災。ブラジル、インドネシアのほか、米カリフォルニア州ポルトガルなどでも甚大な火災被害が発生した。また農業生産のために森林開発が進むほか、木材利用や鉱山開発等による森林伐採も毎年、進んでいる。

 GFW1キャプチャ

 

 通常、ブラジルやインドネシアなどの熱帯雨林地帯では自然火災はほとんど発生しない。GFWは温暖化による異常な高温や干ばつ等の気候変動下で、人為による火の使用が森林火災を引き起こしていると指摘している。特に2015年から16年にかけてはエルニーニョの影響で世界的に高温が発生したことが引き金になった可能性がある。

 

  熱帯雨林地帯での森林火災は生態系を根こそぎ破壊するだけでなく、大規模な火焔の発生は人の健康に影響を及ぼすほか、広範囲にわたってインフラや不動産にダメージを与える可能性がある。また火災で森林のCO2吸収機能が低減するほか、大気中に大量のカーボンを長期間にわたって放出することになるので、温暖化を加速する。

 

 GFWは、森林火災の広がりは、過剰な土地使用による森林消失と温暖化加速の相乗作用によって、熱帯雨林の集積地であるアマゾンなどにおいて、森林の枝枯れ現象を今後、さらに加速させる、と指摘している。

 

 こうした事態を防ぐには、森林の適切な管理によって、森林火災リスクを初期の段階で対応する仕組みが必要、と指摘している。 早期発見・消火のシステムを構築することで、森林消失を食い止められれば、消火活動のコストも減少する、としている。特に乾季における森林地帯での火の使用を制限する規制の導入が必要、としている。

 

 一応、ブラジルやインドネシアでは、土地の開発等に際して、火の使用を制限する政策を導入はしている。しかし、GFWによると、火を使用しないで土地を開発・整地する費用へのファイナンスが不足しているうえに、監視の目が行き届いていないことから、政策の効果はあがっていない、と批判している。

 

 ブラジルでの森林消失面積は3.7万㎢で、前年に比べてほぼ3倍の森林が消えた。その大半はパラー州とマラニョン州で、2015年後半から16年にかけて発生した火災の影響が大きい。特に昨年の火災は森林の下層部の若木を中心に燃やすケースが多かったという。こうした火災の場合、森林全体が消失することはないが、生態系を変え、植生の上位にある樹冠となる樹林を大きく減少させるリスクを高める。

http://www.wri.org/blog/2017/10/global-tree-cover-loss-rose-51-percent-2016