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「パラダイス文書」、英チャールズ皇太子の温暖化対策活動への〝疑惑”を惹起。皇太子が「熱帯林吸収源クレジット」会社の株取得後に、同クレジットの制度化をビデオで主張。まさか(?)(RIEF)

2017-11-08 22:09:21

Charlesキャプチャ

 

   世界の富裕層の税逃れの実態を浮き彫りにする「パラダイス文書」の公開が波紋を投げかける中、英国のチャールズ皇太子の個人資産管理会社が、タックスヘイブン(租税回避地)でCO2排出権ビジネスの投資会社に投資、皇太子の言動が投機に利用されていた可能性が浮上した。同文書ではエリザベス女王の個人資産がタックスヘイブンに投資されていたことも発覚、英王室は大騒ぎだ。

 

 BBCなどの報道によると、皇太子はタックスヘイブンであるバミューダに拠点を置く環境投資会社「Sustainable Forestry Management (SFM)」の幹部だった故Hugh van Cutsem氏と知り合いだったという。そのため、皇太子の個人資産を管理する会社が、2007年に同社の株を11万3500ドル(約1290万円)で取得した。

 

 SFMの2007年2月の取締役会議事録には、皇太子が同社の投資家になったことが報告されており、同社の会長が、皇太子を紹介した Cutsem氏に謝意を表明したことも明記されている。ただ、皇太子が株主になったことは、法令に基づく場合以外は原則秘密とすることも決めていた。

 

 同社の取締役は、森林伐採から熱帯林を守るため、熱帯雨林地帯の土地を購入する投資活動をしていたという。皇太子は、気候変動問題など環境問題に積極的に取り組んでいることは知られている。公開された文書によると、皇太子が株を取得した5ヵ月後に、EUなどの排出権取引の対象に、熱帯雨林などの森林が吸収するCO2を排出クレジットとして認めることを求めるビデオに登場、キャンペーンをしたという。

 

バードウォッチングを楽しんでいる場合じゃないよ・・
バードウォッチングを楽しんでいる場合じゃないよ・・

 

 熱帯林の保護による森林のCO2吸収源をクレジット化する方法は「REDD+」と呼ばれ、世界銀行や民間銀行などがいくつかの地域で試みている。ただ、2007、8年の段階では、吸収量の算定や、地域住民の生活とのバランスなどが課題となり、制度的なクレジット化は難しい状況だった。

 

 しかし、皇太子はビデオにおいて、同クレジットを含めることを求め、EUや京都議定書が同クレジットを除外しているのは「間違いだ」などと指摘したという。この点について、皇太子のスポークスマンは「皇太子が、投資先の企業に有利になるようにテーマを選んで発言することは断じてない。温暖化問題に警告を発する皇太子の意見は、過去30年以上も一貫しており、一般にもよく知られている」とし、投資に結び付けた発言との見方を強く否定した。

 

 ただ、皇太子がビデオで見解を披歴した後、皇太子の資産管理会社は2008年に投資会社の株を売却し、売却額は、取得価格の3倍近い32万5000㌦になった。この間、資産管理会社も皇太子の資産が排出権取引の対象と関連する事業に投資されていることについての情報開示は行っていなかった。

 

 同文書によると、2007年の時点で、チャールズ皇太子はケイマン諸島に4つのファンドに総額3900万㌦(約44億円)を投資していたと される。皇太子のスポークスマンは、これらの投資の収益に対する税逃れの有無については明言せず、皇太子は自らの資産からの収益に対して自発的に所得税を払ってきた、と説明している。

 

 英王室ではエリザベス女王の個人資産がケイマン諸島のファンドに投資されたことも判明している。