HOME4.市場・運用 |新潟水俣病 9人全員認定。東京高裁「感覚障害だけでも認定」と判断。環境省の行政判断の「誤り」明確に。2人は逆転勝訴(各紙) |

新潟水俣病 9人全員認定。東京高裁「感覚障害だけでも認定」と判断。環境省の行政判断の「誤り」明確に。2人は逆転勝訴(各紙)

2017-11-30 11:06:31

niigata1キャプチャ

 

   各紙の報道によると、東京高裁(河野清孝裁判長)は29日、水俣病の症状があるのに、新潟市が患者と認めなかった新潟市内の男女9人(一人は故人)が認定を求めた訴訟で、「症状が感覚障害だけでも認定できる」として、全員の認定を市に命じる判決を出した。原告のうち2人を認めなかった一審の新潟地裁判決を取り消し、全員の認定を指示した。

 

 今回の判決は、新潟水俣病を認定する国の環境行政自体の「誤り」を指摘した形でもある。新潟市は環境省の行政判断に沿って、原告らが感覚障害しか症状がないことを理由に水俣病患者と認めなかった。これまで水俣病の認定については、熊本の水俣病の認定を含めて、環境省(旧環境庁)が1977年の通知で「(認定には)複数の症状が必要」と、認定条件を厳しく設定してきた。

 

 だが、2013年の最高裁判決で「複数でなくても認定できる」との司法判断が示され、環境省の行政判断の誤りが確定している。13年の最高裁判決を受け、環境省は感覚障害だけでも認定できるよう基準を緩める通知を出している。ただ、その場合でも、過去の水銀の摂取状況などを客観的資料で示すことが必要で、患者側からは、依然として認定のハードルは高い、との批判が出ている。

 

 河野裁判長は判決で、13年の最高裁判断を踏まえて「水俣病の可能性が50%を超えるなら認定すべき」と基本的な判断を示した。さらに「手足の感覚障害があり、他の原因を疑わせる事情がなければ、メチル水銀の影響である可能性が高い」と指摘。一審判決が「同居家族に認定患者がいない」との理由で退けた2人についても、阿賀野川の川魚を週3回食べていた、親戚に認定患者がいるなどの事情から、「高度のメチル水銀に暴露した可能性は否定できない」として、2人の認定を市に命じた。

 

 高島章弁護団長は「詳細な証拠が無くても、行政が水俣病と認めるべきだとする法の趣旨を踏まえた判決」と評価した。

  この日の新潟水俣病での判決は、原告の訴えなどを幅広く認定する方向が、改めて司法判断として示されたとえいる。今後、熊本、新潟両方の水俣病の認定をめぐる判断、訴訟に影響を及ぼすとみられる。水俣病の患者と認定されると、原因企業の昭和電工から最大1500万円の一時金や年金、医療費などが給付される。

 原告は50~60代の男女8人と、06年に亡くなった男性の遺族。阿賀野川のメチル水銀に汚染された魚を食べて手足のしびれなどが出たとして、市に公害健康被害補償法に基づく患者認定を申請したが、棄却された。

 新潟水俣病 新潟県東蒲原軍鹿瀬町(現・阿賀町)で戦前から操業していた化学工業の昭和電工の鹿瀬工場がメチル水銀の廃液を処理せずに阿賀野川に排出、同川の川魚を食べた周辺の住民らに有機水銀中毒を引き起こした。1965年に公害に認定された。2017年10月末までに、新潟県と新潟市に認定を申請した延べ2615人のうち、認められたのは705人。多くは1977年に国の基準が厳しくなる前に認定されている。