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中国の昨年末の廃プラスチック輸入禁止。欧米日の代替輸出先として、マレーシア、ベトナムなど東南アジア諸国の輸入急増。ごみ取引より国内での減量化・リサイクルの確立を(RIEF)

2018-01-16 22:26:47

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 中国は昨年末、海外からのプラスチックごみの輸入禁止措置を実施した。中国は、これまで世界の廃プラ輸入市場の過半を占めていただけに、欧米日の輸出国側も対応に苦慮しているが、当面の代替措置として、東南アジア諸国の輸入が急増したことがわかった。しかし、これらの国々の処理能力には限界があり、プラスチック等の廃棄量そのものの抜本的な減量化、国内リサイクル体制の整備が急がれる。

 

 中国国務院は「海外ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革の実施計画」を制定、環境への悪影響が大きい資源ごみの輸入を12月末で禁止した。国内の資源ごみで代替可能な固形廃棄物の輸入についても2019年末までに段階的に縮小する。対象は廃プラスチック、未処理の古紙、繊維系の廃棄物、バナジウムスラグなど。

 

 中国の貿易統計によると、2016年の中国の廃プラスチックの輸入量は734万7,200㌧。世界の輸入量の56%と過半を占め、輸入総額は37億㌦に上った。うち日本からが約84万2000㌧で、香港に次いで多く全体の約1割を占めた。同年の古紙輸入量は284万9841㌧。日本は米国、英国に次ぎ、全体の1割の約28万4310㌧だった。

 

 中国へのごみ輸出が原則、出来なくなったことで、欧米日の廃棄物業者は国内処分を増やして減量化を目指している。しかし、処理設備の限界等から、効果を上げるには時間がかかる。代わりに、昨年から目立っているのが、マレーシア、ベトナム、インドネシアなどの東南アジア諸国への「代替輸出」だ。

 

インドネシアでの手作業での廃棄物処理の様子
インドネシアでの手作業での廃棄物処理の様子

 

 べルギーに拠点を置く国際リサイクル機関(Bureau of International Recycling:BIR)によると、マレーシアの昨年の廃プラなどの海外ゴミ輸入量は45万~50万㌧で、前年比56~74%増と急増した。ベトナムも62%増の50万~55万㌧。タイは117%増、インドネシア65%増と、軒並み急増した。閉ざされた中国市場の受け皿になったことが明瞭だ。

 

 これらの東南アジア諸国は、国内ごみのリサイクルシステム自体が現在開発中で、廃棄物に対する国民意識も十分ではない。ただ、中国市場に近いということと、低コストの労働力を比較的容易に調達できることから、中国の輸入業者らが代替輸入先として各国に進出しているという。

 

 しかし、中国市場に比べると、これらの国の国内リサイクル市場は小さい。このまま年間5割~倍増のペースでの輸入が続くと、市場は早晩、パンクするのは必至だ。また輸入増に伴い不正輸入も増加していることから、輸入後の処理ができずに環境汚染等を拡大する懸念もある。このため、各国でも規制強化の声があがっている。

 

 根本的な問題は、中国の輸入規制ではなく、膨大なプラスチック等の廃棄物の排出にある。先進国だけでなく途上国も、国内でリサイクルできる規模の廃棄物排出にとどめ、他国に輸出するのを減少させ、生態系にも影響を及ぼさない循環社会の基盤を構築する必要がある。

 

 BIRのプラスチック委員会のメンバーでもあるベルギーのリサイクル会社のSurendra Patawari Borad氏は「廃棄物産業は、中国の輸入禁止措置への準備ができていなかった。私はこれまでも、中国が風邪を引いたら、われわれ欧米は熱を出し、中国が熱を出したら、われわれは肺炎を起こす、と指摘した。その通りになってきた」と 指摘している。

 

 香港ベースの国際プラスチックリサイクル会社のVanden Globalの創設者、Damien van Leuven氏は「今、廃プラスチックの売却が困難になっている人々は、その事態に文句を言うべきではない。むしろ自分自身を見つめ直すべきだ」と、廃棄物を自分自身で減量化、処理する方向を目指すべきとしている。

 

 環境NGOのGreenpeace East Asia のキャンペーン担当、Liu Hua氏も「長期的にはプラスチックの使用を減少させるべきだ。東南アジア諸国は、人体の健康に有害な有害化学廃棄物やネガティブな影響を与える廃棄物のコントロールを強化すべきだ」と要求している。

 

 これまで世界中で生産されたプラスチック製品は80億㌧に達している。しかしこのうちわずか9%しかリサイクルされていない。大半の80%は廃棄物として埋め立てられたり、海洋に投棄されたりし、汚染を拡大する要因になっている。

 

http://news.trust.org/item/20180116020034-pnwv6/

https://www.jetro.go.jp/biznews/2017/09/847f1987f55e4fab.html