HOME11.CSR |拡大する貧富の格差、2017年中に生じた世界の富の82%は人口1%の富裕層に。人口半分の37億人の貧困層の富は全く増えず。富裕課税や経営者の高額報酬制限など必要。英NGOオックスファムが報告(RIEF) |

拡大する貧富の格差、2017年中に生じた世界の富の82%は人口1%の富裕層に。人口半分の37億人の貧困層の富は全く増えず。富裕課税や経営者の高額報酬制限など必要。英NGOオックスファムが報告(RIEF)

2018-01-23 17:36:19

Oxfam3キャプチャ

 

   英非政府組織(NGO)のオックスファム・インターナショナルは、2017年に新たに生じた富のうち82%は、世界人口の1%でしかない富裕層の手に渡り、人口の半分を占める37億人の貧困層は富がまったく増えなかった、とする報告書を公表した。報告書はスイス・ダボスで開かれる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に向けて情報発信された。

 

 それによると、富裕層は2010年以降、年平均13%の富が拡大している。通常の労働者の賃金上昇率(年平均2%)より、6倍も早い成長スピードを続けている。富裕層(10億㌦以上の資産保有者)の数は、2016年3月から17年3月までの1年間だけで、2日ごとに1人増えているという。

 

 貧富の格差の拡大は加速している。グローバルなファッションブランド5社の一角を占めるある企業のCEOは、そのサプライチェーンの末端に含まれるバングラデシュの衣料品工場で働く女性労働者が一生かかって稼ぐ生涯賃金分を、わずか4日で稼ぎ出す。

 

 また250万人いるとされるベトナムの衣料品工場労働者全体の年間総賃金は22億㌦とされる。この金額は、2016年に同様の5大ファッションブランドの衣料品企業に投資している富裕株主が手にした投資リターンの3分の1でしかない。

 

 oxfam1キャプチャ

 

 オックスファムの代表、Winnie Byanyima氏は「ビリオネーヤー(10億万㌦長者)ブームは、経済繁栄の証ではなく、経済システムの失敗を象徴する。われわれの衣服を縫製し、携帯電話を組み立て、食品を育てて生計を立てている人々が、低価格商品の安定供給のために搾取され、大企業や富裕投資家の利益を膨らませるために搾取されている」と批判している。

 

 格差は富者と貧者の間だけにあるのではない。世界中で、女性労働者は男性より安い賃金にとどめられ、労働環境も最悪な状況におかれている、と指摘している。10億万㌦長者についても、その10人のうち9人は男性で占められている。

 

 報告書は、ベトナムの衣料品工場で働く女性労働者が、故郷を遠く離れて働かざるを得ず、何ヶ月も子どもに会えない状態が続いているケースや、米国の家禽工場で働く女性が、トイレに行く時間も十分に与えられないことから、オムツの着用を迫られているなどの事例を指摘している。富の格差に男女の格差だ。

 

 Oxfam2キャプチャ

 オックスファムは、各国政府に対して、一部の人が総取りする経済ではなく、働く者みんなが配分を得る経済に切り替えるべきだと主張している。具体的には、①株主やトップ経営者への報酬に限度を設定し、すべての労働者が相応な生活ができるような「最低賃金」を保証する②賃金の男女格差を廃止し、女性労働者の働く権利を保証する③富裕層向けの高率課税と、減免税の廃止、健康管理や教育などの公的サービスの支出拡大ーー等を求めている。

 

 Byanyima氏は「今や、格差について懸念を口にしない政治家や経営者を見つけるのは難しい。だがそれについて行動を起こしている政治家や経営者を見つけるのはもっと難しい」と皮肉った。「多くの政治家や経営者は、富者が払うべき税を減らし、労働者の基本的人権を剥奪するなど、むしろ、事態を悪化させている」と述べた。

 

 ダボス会議自体も、世界の知性を集めたはずが、「会議は踊る」に変質して久しいーー。

 

https://www.oxfam.org/en/pressroom/pressreleases/2018-01-22/richest-1-percent-bagged-82-percent-wealth-created-last-year