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中国沖でのタンカー沈没事故での石油流出量、史上最悪か。黒潮に乗って、日本の海域に広範な影響を与える可能性濃厚に。日本政府の対応は十分か(RIEF)

2018-02-02 11:31:41

 

   中国沖で年初の1月6日に貨物船と衝突・炎上して沈没したイラン企業所有の石油タンカー「Sanchi(サンチ)」事故の影響が日本全体に及びつつある。事故で流出した大量の石油が海流に乗って拡散、日本などの周辺諸国の海洋への汚染を広げているためだ。流出した原油量は、史上最悪とされた1989年の米「エクソン・バルデューズ号」の原油事故を上回る可能性も指摘されている。

 

 すでに今月1日には、鹿児島県奄美市の海岸で黒い油のようなものが広い範囲に漂着しているのが確認されている。第10管区海上保安本部によると、奄美市名瀬の朝仁海岸で約500mにわたって、黒い油のような塊が砂浜に漂着しているのが確認された。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180201/k10011312181000.html

 

 サンチ号はパナマ船籍。事故は上海の沖260kmの海域で発生した。タンカーは貨物船と衝突後、8日後に沈没、乗組員32人が行方不明、全員死亡したとみられている。タンカーは軽質原油13万6000トンを積載していた。加えて、タンカー自体の燃料の重質油も流出した。

 

 英国の国立海洋科学センター(NOC: National Oceanography Centre)はサウサンプトン大学と共同で緊急海洋モデルを使ったシュミレーションで分析した。センターは「タンカーから流出した石油は一カ月以内に日本や韓国の済州島などの周辺に到達するだろう」と指摘している。また流出した石油は、ほぼ3カ月は海洋に滞留し続けるとみている。

 

一週間以上も燃えたタンカー。この後、沈没した
一週間以上も燃えたタンカー。この後、沈没した

 

 事故当初は、流出した石油の大半は周辺の海洋にとどまり、日本や韓国等の周辺海洋に流れ着くのは3カ月かかると推計された。その間に、蒸発や海洋での希釈等で生態系への影響は減衰するとみられていた。ところが、流出量が予想以上に多かったとみられるほか、海流の影響も大きく、修正版のシュミレーションでは、流出した石油はすでに黒潮と対馬海流に乗って、拡散が進んでいることが分かった。

 

 この結果、新しいシュミレーションによると、黒潮で運ばれた流出石油は、九州・四国の南部から本州、さらには東京湾にも2か月以内に到着する可能性が指摘されている。汚染された黒潮はその後、北太平洋周辺で、深海に吸収されるとみられている。

 

oil4キャプチャ

 

 流出石油の影響について、米国の石油流出対策の専門家、リチャード・スタイナー氏は「1週間にわたって爆発・炎上が続いた船体の損傷を考慮すると、貨物倉や燃料油貯蔵タンクのうち無傷で残っているものはなく、従ってコンデンセート(超軽質原油)と燃料のすべてが流出したと思われる」と指摘している。1回の事故で海洋流出したコンデンセートの量としては史上最多と指摘している。

 

 仮に流出したのが積載量の20%だとしても、1989年にアラスカ沖で発生した石油タンカー「エクソン・バルディーズ(Exxon Valdez)号」の事故の際の原油流出量に匹敵する規模だという。http://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/rngs/CHINA-SHIPPING-SPILL/010060NC166/index.html

 

 

http://www.noc.ac.uk/news/sanchi-oil-spill-contamination-could-reach-japan-within-month-update