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南極のペンギン、今世紀末には現在の3分の1に減少の可能性。エサとなるオキアミが温暖化の影響と、過剰漁業で減少の見込み。米研究で明らかに(RIEF)

2018-02-16 17:23:56

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 南極のペンギンが今世紀末に、現在の3分の1にまで減少する可能性が出てきた。気候変動の影響と、商業漁業の拡大とで、現在は南極海に豊富に存在するオキアミが大幅に減少するとみられるためだ。米政府の「南極海洋生物資源保存委員会:CCAMLR」の首席科学者らが研究論文で指摘した。

 

 オキアミの減少は、オキアミをエサとしているペンギンや鯨、ヒョウアザラシなどの生息を危機にさらす。研究論文はCCAMLRのGeorge Watters氏らの共同論文でタイトルは「Impacts of rising sea temperature on krill increase risks for predators in the Scotia Sea」。米科学誌「Plos One」に掲載された。

 

 調査は南極海と大西洋にまたがるスコシア海を対象に実施された。同海は航海上の難所として知られている一方で、豊富な水産資源があり各国の漁業基地なども置かれている。最近では南極クルーズでも知られる。

 

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 研究者たちは同海域での調査と、それらのデータを元にした4種類のオキアミ捕食生物(ペンギン、鯨、アザラシ、魚類)を対象としたモデル分析を行った。その結果、同海域の北部を中心に、オキアミは気候変動の影響で今後40%ほど減少するとの結果が出た。オキアミの減少はその捕食者であるペンギン、鯨等の減少につながる。また同海域ではオキアミ漁も盛んで、気候変動による影響ほどではないが、過剰漁獲もオキアミの減少を加速させていくとみている。

 

 Watters氏は「南極海でのオキアミ漁をすべて禁じよ、というつもりはない。しかし、オキアミ漁を現状よりも効果的にしないと、オキアミをエサとしている生き物の生存にかかわる影響を与えることを知るべきだ。そうした影響を漁業管理の決定に反映させてもらいたい」と述べている。

 

 オキアミは南極海での食物連鎖の重要なカギを握る。上述のようにペンギンなどの捕食動物のエサになるほか、オキアミ自身は海洋表面近くに漂う藻を食べる。これらの藻は二酸化炭素を大量に含んでおり、オキアミが食べて消化することで、海洋面から海底に沈み、大気中に再放出されることがなくなる。

 

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 オキアミの生息数は、温暖化の影響と、オキアミ漁の増加の両方の要因によって、1970年代からすでに80%にまで減少している。海氷の減少は氷を住処としている藻の生息を阻み、それらを食するプランクトンの減少にもつながるからだ。

 

 日本は2011年にオキアミ漁から撤退しているが、サプリメントや養殖魚のえさの一部としては日本でも利用されている。 こうしたことから、南極の生態系のカナメの位置にあるオキアミを守るため、環境NGOなどは南極海に広大な海洋保護区を設ける運動を展開している。

 

http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0191011