HOME4.市場・運用 |北極海氷中に、マイクロプラスチック蓄積 「重大な汚染源」に。レジ袋や魚網など17種の由来源。極めて微細で、海洋生物に摂取される可能性も。ドイツ極地海洋研究所が調査(AFP) |

北極海氷中に、マイクロプラスチック蓄積 「重大な汚染源」に。レジ袋や魚網など17種の由来源。極めて微細で、海洋生物に摂取される可能性も。ドイツ極地海洋研究所が調査(AFP)

2018-04-25 22:58:15

Arcticキャプチャ

        

 ドイツのアルフレッドワグナー極地海洋研究所(AWI)は、北極圏の海氷中にマイクロプラスチックが高い濃度で含有されていることを発見した。最高濃度は1㍑当たり1万2000個のプラスチックが検出された。それらのプラスチックは極めて微細で、海洋生物が採取する恐れが指摘されている。プラスチックの由来は、レジ袋や魚網など多様で、温暖化が進んで海氷の融解が加速すると、大量に海洋中に還流するリスクが高まっている。

 

 調査結果は、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。論文によると、今回の測定で判明したマイクロプラスチックの含有濃度は、これまでの測定法で知られていた水準よりも、2~3倍高いという。

 

 AWIの研究チームは、2014年春から2015年夏にかけて、砕氷観測船ポーラーシュテルン(Porastern)を使って、3度にわたって北極海での調査航海を行った。この調査で、北極海の中央から北大西洋に向けて極地横断的に5地域と、デンマーク領グリーンランドとノルウェーの間のフラム海峡に沿って航海した。

 

Arc2キャプチャ

 

   研究チームは海氷中のマイクロプラスチックの量を正確に測るため、赤外線を照射して赤外線の吸収巣ペクトルを測る「フーリエ変換赤外分光法」を活用した。同方式は、プラスチックの構造内容の違いによる異なる波長を測定し、由来物までわかる。その結果、採取した海氷サンプルには17種の異なるプラスチック粒子が含まれていることを発見した。

 

 それらには、ポリエチレンやポリプロピレンなどで作られたレジ袋や食品包装物のほか、船の塗料、漁網、合成繊維のナイロン、紙巻きたばこのフィルターなどに由来する硝酸セルロースなどが含まれていた。これら6種類は、観測した全体のほぼ半分のプラスチック粒子の由来源だった。

 

 また、67%のプラスチック粒子が、50μm以下の際めて微細なサイズで、海洋中に閉じ込められていた。一部の粒子はさらに小さく直径が11μmのサイズと、人間の髪の毛の直径の約6分の1しかないという。1μmは1000分の1mmに相当。

 

Arc3キャプチャ

 

 海氷中のプラスチック濃度は均質ではなく、サンプルによって多様に異なっていた。これは、海流によって漂流し、吹き溜まりなどでは高い濃度になるなど、自然の変化によっているとみられる。基本的には、太平洋北東部の海水がベーリング海峡を通って北極海に流れ込んだカナダ海盆(Canada Basin)の海氷には高い濃度のプラスチックが含まれている。太平洋には、「太平洋ごみベルト」と呼ばれるほどの大量のプラスチックごみが漂流しており、これらが時間を掛けて、北極海に流れ込んでいるわけだ。

 

 一方、船の塗料や魚網を由来とするナイロンなどは、シベリアの沿岸の浅瀬からの流出とみられる。このため、研究者たちは、温暖化の加速で北極圏を航行する船舶が増え、漁業も拡大していることが、汚染にもつながっているとみている。北極海以外の外洋から運ばれてくるプラスチックゴミと、北極海内での経済活動で発生する内部汚染の両方で、海氷中のマイクロプラスチック濃度が上昇していることになる。

 

 研究チームの一員で論文の共同執筆者のイルカ・ピーケン(Ilka Peken)氏によると、プラスチック粒子は海氷内に2年から最大で11年間とどまるという。この間に、海氷はロシア東部のシベリアや北米の海域から南へ移動し、デンマーク領グリーンランドとノルウェーの間のフラム海峡に到達、そこで融解するという経路を辿る。海氷は同海峡で融解する一方で、北方の海域では新たな海氷が形成されるというサイクルが繰り返される。温暖化の加速によって、そのサイクルは年々、早まっているとみられる。

 

Arc5キャプチャ

 

 また、今回の調査でわかったように、マイクロプラスチックが極めて微細であることから、魚が常食とする小型甲殻類などの「北極海に生息する微小な生物でも容易に体内に摂取できる恐れがある」(ピーケン氏)。ただ、同氏も「マイクロプラスチックが海洋生物にとって、また最終的には人にとってどれほど有害なのかは、まだ誰も確かなことは言えない」と述べている。

 

 プラスチック汚染は、今回、北極圏で高い濃度で発見されたが、身近な生活空間でも広がりを見せている。海洋水から製造する食卓塩のほぼすべてに、微細なマイクロプラスチックが含まれていることは、複数の研究で既に判明している。http://rief-jp.org/ct12/72592. 水道水にも同様に含まれている。http://rief-jp.org/ct12/72488?ctid=65

 

 北極圏のプラスチック汚染の原因となっている太平洋のゴミベルト地帯は、日本の面積の倍以上の広がりになっていることも指摘されている。http://rief-jp.org/ct12/78800 

 

 一方で、こうしたプラスチックを処理する技術の開発も遅まきながら始まっている。だが、排出されるゴミの量の多さに間に合わないのが現状だ。人類の経済活動による地球温暖化の加速と並ぶ、グローバル汚染の一つであり、「もう一つのパリ協定」が求められる。http://rief-jp.org/ct12/78639?ctid=32

 

https://www.nature.com/articles/s41467-018-03825-5.epdf?author_access_token=c4T6mkKiJDaVwEbNDNF–dRgN0jAjWel9jnR3ZoTv0NPlWISm4c6k0ACruCH8J9UZRxj-yztOH1TeLbDwjJraBxo-LSBjMu4lGHF_-intR06PtR5iPbi_hVky-XbUEqIwvWxJOYxhyncbfScTCGrUw%3D%3D

http://www.afpbb.com/articles/-/3172445