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イギリスで増加する馬の不法投棄。ペット感覚で飼育、飼育費用や病気などの費用増で、捨て去る。英BBCは「英国の恥部」と批判。日本のペットブームにも警鐘(RIEF)

2018-04-26 16:27:48

horse1キャプチャ

 

  かつては「騎士の国」と言われたイギリスで、騎士や人々を支えてきた馬が、飼い主からゴミのように捨てられ、野垂れ死にするケースが増加している。BBCによると、動物愛護団体の草分け、英国動物虐待防止協会(RSPCA)が昨年保護した馬の数は1000頭近くにのぼり、過去4年間で最高となった。RSPCAは2012年から馬を捨てないよう訴えているが、問題は悪化するばかりだという。

 

 (写真は、道端の泥の中に捨てられた馬を救助する様子)

 

 英国には約80万頭の馬が飼育されているという。英国の都市の郊外に続く広い丘陵は、どこまでも牧草が茂る風景が広がる。ただ、馬は比較的価格が安く買えるが、飼育のためには、飼料代がかかるほか、毎日運動をさせたり、手入れをするなどの手間がかかる。

 

 最近はオンラインで売られる馬は「ネコよりも安い」などの販売セールスがつくという。実際に、1頭25ポンド(約3800円)で売られていたり、妊娠中の馬は「子馬もタダで手に入ります」との宣伝文句がついている場合もあるという。しかし、馬が病気になると、通常の飼料代だけではなく、4000ポンド(60万円)~5000ポンド(76万円)もかかるケースもある。

 

horse3キャプチャ

 

 このため、当初は、ペット感覚や子どもの遊び相手のつもりで、馬を購入した後、面倒を見切れなくなったり、あるいは馬が病気や怪我をして、治療費用の高さにうんざりして、飼い主から捨てられる事例が多いという。日本でもペットの犬猫が高齢になったり、病気になったりして捨てられる場合が少なくない。

 

 RSPCAの主任検査官のサム・ガービー氏によると「ゴミと一緒に、馬を道端に捨てるケースが相次いでいる」と明かす。なかには妊娠した牝馬を道端に捨て、救助の甲斐もなく、母馬は死に、赤ちゃん馬も死産だったという悲しい出来事もあった。

 

湖に打ち捨てられた馬を救助する作業
湖に打ち捨てられた馬を救助するRSPCAの作業

 

 RSPCAが公開している動物虐待通報用の電話番号には、馬だけで毎日平均80件も電話が英国中からかかってくる。その多くが、馬が虐待されたり、見捨てられたりしているのを、心配してショックを受けている人々からの通報である。

 

 RSPCAでは、見捨てられた馬を保護しており、その数は現在、850頭以上になる。大みそかの日、原野のフットパスで、泥のなかに倒れているのが見つかった馬は「Adie」と名づけられた。「Adieは病気にかかっていたので捨てられたのだろう」とガービー氏は言う。泥から引き出すのに5人がかりの力が必要だった。Adieは現在は、RSPCAで元気を回復している。

 

元気を回復したAdie
元気を回復したAdie

 

  怪我や病気は、ペットもかかる。いずれは高齢になって寝たりきりになり、死んでいく。人間と同じだ。それをわかった上でペットと絆を結ぶことが基本である。騎士道を持ち出さなくとも、生きる仲間としてのペットや馬を、怪我や病気の時こそ、労わり、慈しむのが人間の生き方のはずだ。馬を道端に捨て去る人々は、自らの人間性をも捨てていることになる。

 

http://www.bbc.com/news/uk-43813364