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オーストラリア政府、世界最大のサンゴ礁、グレートバリアリーフの「危機打開」のため、5億豪㌦(約413億円)の投資を宣言。ターンブル首相が指示(RIEF)

2018-04-30 19:27:20

GB1キャプチャ

 

  オーストラリア政府は29日、気候変動の影響でサンゴ礁の白化などの影響を受けている世界最大のサンゴ礁群のグレートバリアリーフ(Great Barrier Reef:GBR)を緊急に修復、保護するために5億豪㌦(約413億円)を投じる方針を表明した。グレートバリアリーフは2016年の熱波でサンゴ礁の約30%が白化するなどの大きな打撃を受けたことが判明している。

 

 GBRのサンゴ礁が、2016年の記録的熱波により「壊滅的な大量死」に見舞われたことは、今月19日に英科学誌ネイチャー(Nature)に報告書が掲載され、国際的に波紋を広げている。約2300kmにわたるGBRのサンゴ礁の約30%が、2016年3月~11月の熱波で死滅。さらに翌17年にも過去最大規模の白化現象が確認されている。

 

 影響はこれまで考えられていたより広範囲で、深刻なことが発覚したことから、マルコム・ターンブル豪政権は、同海域の海洋環境維持を担うグレートバリアリーフ財団と連携し、同海域の汚染防止と気候変動の影響減少のための対策を打ち出すことになった。

 

ターンブル首相
マルコム・ターンブル首相

 

 総額5億豪㌦の予算拠出は5月の編成で確定する。具体的な対策については、GBR海洋公園当局と環境・エネルギー局の予算を拡大して、海域全体の環境マネジメント・コンプライアンス対策を拡大することを目指す。

 

 GBRの広範囲のサンゴ礁の白化や、海洋面全体の汚染の原因は、温暖化による海温の上昇だけではない。周辺陸地の開発による土砂等の流入、プラスチック等の生活廃棄物の滞留、周辺陸地での農業で投じられる大量の肥料や農業廃棄物等の流入などが指摘されている。

 

 5億㌦の資金拠出の内訳は、2億100万㌦が水質改善対策で、周辺農業での肥料の品質の改善などが中心。1億㌦はサンゴ礁の修復・回復のための研究活動費に、サンゴを食べるヒトデ対策費に5800万㌦、周辺地域のエンゲージメント対策費に4500万㌦、サンゴ礁や海域全体のモニタリング費用に4000万㌦、などの予定。

 

左の陸地側はクィーンズランド州。北東海岸がGBR
     左の陸地側はクィーンズランド州。北東海岸がGBR
 保守政権のターンブル首相は、これまで環境団体から、GBRを保護するための迅速な対策をとっていないと批判されてきた。同リーフのあるクィーンズランド州では、インドのアダニ・グループによる石炭開発計画が進行しており、政府は計画推進の立場であることから地域住民やNGOらが反発を強めてきた。

 

 また政府資金がGBRの環境保護よりも、観光資源開発のために多額の資金が関連のツーリズム・観光関連事業者に投入されてきたことも環境団体などから批判を受けている。今年の初めには国連環境計画(UNEP)から、豪政府の開発主導の対応に対して、「GBRを守れるかどうかのギリギリの状態にある」と警告が発せられたほどだ。

 

  ターンブル首相は29日にメッセージを公表。「新たな資金投入は、GBRの環境維持のためと、ツーリズム産業の雇用維持のための投資」と指摘。そのうえで、「世界中のGBRのような海域は、強い圧力にさらされている。大きな挑戦は大きな投資を求める」と述べ、あくまでも今回の資金拠出を「投資」と強調した。

 

 首相は、傷ついたサンゴ礁の修復等の事業については、国際協力、特に太平洋の各国との協調を進めたい、と付け加えている。

 

https://www.pm.gov.au/media/record-investment-great-barrier-reef-drive-jobs